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第91回 ─ YUKI × 銀杏BOYZ @Zepp Tokyo 2008年6月22日(日)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2008/06/26   22:00
テキスト
文/土田 真弓

コンサート制作の老舗、HOT STUFF PROMOTIONの設立30周年記念イヴェント〈BLACK AND BLUE〉が、6月20日~22日に渡ってZepp Tokyoにて開催されました。20日はチャットモンチー × スチャダラパー、21日はPerfume × SPECIAL OTHERS、22日はYUKI × 銀杏BOYZという、超異色の対バン・ライヴが繰り広げられた3日間の模様を、bounce.comでは詳細にレポートいたします!

  異色コラボ・シリーズ〈BLACK AND BLUE〉のうち、最も美女と野獣度が高いと思われる組み合わせの最終日(筆者比)。まず軽快に姿を現したのは、淡いピンクのミニ・ドレスに身を包んだコケティッシュ・ビューティー=YUKIだ。コーラス×2、DJ×1を含む7人編成のバンド・セットによる1曲目は“ふがいないや”。冒頭からパワー全開でステージ上を飛び回り、伸びやかな歌を披露する彼女を前に、フロアは一気に沸点へ到達。「今日(集まっているの)は、カッコイイ男の人と女の人ばかりだと思います。倒れそうになっている子がいたら、みんなで助けてあげてください。そして、恋も生まれてください(笑)」と彼女らしいMCで会場を和ませた後は、“ハローグッバイ”“長い夢”などのヒット・シングルを連発する。

 中盤のMCでは〈デビュー直後でお金がなかった頃、HOT STUFFのスタッフとボーリングに行った時にバニラ・アイスをおごってもらったのがすごく嬉しかった。今日は、そのお礼を言いにやって来ました!!〉といったエピソードも公開し、“プリズム”“汽車に乗って”などの聴かせ系ナンバーを経由してセットはあっという間に終盤へ。ラストを飾ったブリブリのファンク・ロック・チューン“Rainbow st.”では、ギターの松江潤とマトリョミンを操るYUKIとの宇宙的サウンド・バトルが勃発するなど、完璧にショウ・アップされたステージを展開。陽性のエネルギーを大量放出する彼女に、終始、目と耳が釘付けの約60分だった。


  対するビースト代表は、濃厚過ぎるほどの野性味で観客を翻弄する銀杏BOYZ。Tシャツ+トランクス(もちろんTシャツは途中で脱ぎ捨てられる)といういつものスタイルでキメた(?)峯田和伸がたったひとりで登場し、まずは前日の夢に出てきたという死んだじいちゃんとばあちゃんの写真をドラム・セットの前に飾る。

 「この歌を、僕の目の前にいるあなたたちひとりひとりに歌います。この歌を、この会場に来れなかったすべての人たちに歌います。この歌を、2週間前に秋葉原で人を刺した加藤くんに歌います。この歌を、あの秋葉原という街で刺されてしまった人に歌います。この歌を、あなたたちと一緒に歌いたい。この歌は、僕たちがいまここで生きているということに対しての鎮魂歌であります」――と、ハーモニカの音色だけを道連れにアカペラで歌い始めたのは“人間”。もちろん、観客も大合唱だ。曲の中盤からは残る3人も合流し、会場はいきなりエンディング級の盛り上がりへ突入する。

 この異様な祭り状態を牽引するかのごとく、まずはドラム・セットの向こう側から飛び出して来たドラムス・村井守が観客の頭上へダイヴ。アッパーにもほどがある“NO FUTURE NO CRY”“SEX TEEN”が畳み掛けられるなか、ベースの安孫子真哉、ギターのチン中村も、いっそ〈美麗〉と言いたいぐらいの迷いのないフォームでフロアに飛び込んでいく。さらには峯田がいつのまにやら流血と、思春期男子的な妄想・衝動があちらこちらへ激突しながら暴走する音楽性を、メンバー4人は身をもって再現。その同時多発的な狂態は、カッコ悪さを覆すほどの強烈なインパクトを観客に叩きつけ、突き抜けた感動を呼び起こす。

  雨が降るなか会場に集まった観客に「あんたらこの国の宝だと思うわ。ブッサイクとブスばっかだけどよ(笑)」と、愛ある悪態をついてみたり、ちょっと割愛せざるを得ない男子向けの下ネタになぞらえた〈ライヴ礼賛〉トークを繰り広げてみたりと〈すべらない話〉満載の長大なMCに続くのは、“トラッシュ”と“SKOOL KILL”。過激に撒き散らされる純正パンクに触発され、ダイヴァーはひっきりなしに広々としたフロアを泳ぎ切る。

 「今年の銀杏は出すものがいっぱいあるんだ」と、その先陣を切るライヴDVD「新興宗教銀杏BOYZ」のリリースを発表した後、彼らは新曲“銀河鉄道の夜 第二章 ~ジョバンニに伝えよ、ここにいるよと~”を披露。GOING STEADY時代の名曲“銀河鉄道の夜”の続編となるこの曲を皮切りに、“あいどんわなだい”“BABY BABY”“僕たちは世界を変えることができない”とシンガロング・ナンバーを容赦なく連打し続け、野獣たちのステージは終了した。

  アンコールは、大方の予想を裏切ることなく銀杏BOYZの“駆け抜けて性春”。(音源でYUKIが担当した)女子パートが近づくにつれて観客の期待が膨らんでゆき――峯田の「YUKIちゃ~ん」という呼び掛けに応えて、変則ボーダーのワンピースを纏ったマドンナがふたたび降臨。汗臭さが80%減少(筆者比)するほどに清々しい声で歌う彼女と銀杏4人の姿は、まるで〈姫としもべたち〉のよう。不思議と微笑ましい空気が、会場全体を包み込む。そのまま終演を迎えた5人は、満面の笑顔でひとりずつステージを去っていった。

 会場を覆う昂揚感、幸福な余韻に浸るオーディエンス……という光景が目に映るはずの、閉幕後のZepp Tokyo。しかし、そんな美しい思い出を打ち消すかのごとく、ステージ袖に消える間際にきっちりと尻を出すことも忘れない峯田であった。

BLACK AND BLUE セットリスト

YUKI
1. ふがいないや
2. ビスケット
3. ハローグッバイ
4. 長い夢
5. プリズム
6. 汽車に乗って
7. 66db
8. JOY
9. ワンダーライン
10. Rainbow st.

銀杏BOYZ
1. 人間
2. NO FUTURE NO CRY
3. SEX TEEN
4. トラッシュ
5. SKOOL KILL
6. 銀河鉄道の夜 第二章 ~ジョバンニに伝えよ、ここにいるよと~
7. あいどんわなだい
8. BABY BABY
9. 僕たちは世界を変えることができない
―アンコール―
10. 駆け抜けて性春 with YUKI

▼YUKIと銀杏BOYZの作品