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第11回 ─ 曽我部さんの夏フェス観覧計画

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2008/07/17   18:00
更新
2008/07/17   18:40
テキスト
文/bounce.com編集部

ご存知〈キング・オブ・メロウロック〉こと曽我部恵一のマンスリー連載! ご自身のお店〈City Country City〉でも素敵な〈手描きPOP〉を作っている曽我部氏が、タワーレコードのPOPを担当。独自のテーマでCD/DVD/書籍をチョイスし、その作品のPOP作りに挑みます。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開……というWEB&店舗の連動企画! さて今月のセレクション・テーマは、〈ライヴを見たい夏フェス出演アーティストと、その作品〉です。

  曽我部BANDとして、ランデヴーバンドとして、鈴木慶一さんとの共演で、はたまたHIROSHI WATANABEとのユニットとして……といった具合に、この夏は様々なかたちで全国各地のフェスに出演しまくる曽我部さん。今月は〈ライヴを見たい夏フェス出演アーティスト〉を選んでいただきました!

曽我部「確かに今年は色んな出方をするんだよね。〈ROCK IN JAPAN FES.〉では、DJブースにも出ます。しかもソカバンで(笑)。何しようかなあ……ブルーハーツの曲とかをカヴァーしておいて、それをCD-Rでかけるってのはどう? 新しくない(笑)? 夏フェスはサニーデイ時代からたくさん出てきたけど、一番印象深いのは、やっぱり1回目の〈SUMMER SONIC〉。ミュージシャン全員が使う大きなラウンジみたいなところでご飯を食べてたら、ジェイムズ・ブラウンが入ってきたんだよ。〈あれJBじゃない?〉ってみんなざわつき始めてさ。で、俺の斜め向かい辺りにひとりで座って、ご飯を食べ始めて。そしたらサインをもらいたいやつが並び始めたの。俺も5人目くらいに並んだんだけど、俺の番になったら〈ノー・モア〉って。JBに〈もう嫌だ〉って言われた(笑)。まあでもJBと喋ったことには間違いないから。フェスの思い出っていうとそれだなあ」。

MY BLOODY VALENTINE @ 〈FUJI ROCK FESTIVAL〉 『Loveless』

曽我部「やっぱり今年の目玉はこれでしょう。〈ほんとに来るのか?〉っていまでも思っちゃうし、見ても〈結局よくわかんなかったね〉ってことになりそうだけど(笑)。なにしろ実体のない音楽だからね。『Loveless』は、それまでの音楽の基準をいくつか覆したと思う。歌がいいとか、メロディアスであるとか、そういうことはどうでもいい音楽を作った。それよりもノイズが心に響けばいい、みたいな。風のようなアルバム。あんな音楽はこれしかないし、代わりが利かないからこそ、ものすごい待たれてるバンドでしょう。それ以前のアルバムも好きだけど、『Loveless』はそれとも別物だしね」。

Shing02 @ 〈FUJI ROCK FESTIVAL〉〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉ほか 『緑黄色人種』

曽我部「ライヴを見たことがないから見てみたい。ヒップホップのライヴってDJの延長みたいな感じで、結構拍子抜けすることが多いんだけど、shing02は、なんとなくライヴも良さそうな感じがするな。『緑黄色人種』はいわゆるB-BOY的なところがまったくないアルバムだよね。いまの日本語ラップってスキルばっかり進化し過ぎて、韻と声のアタック感はすごいんだけど、なんの歌だかよくわかんないものも多いじゃない。そこで、ふと高木完の『FRUIT OF THE RHYTHM』みたいなオールドスクールなものを聴くと、言葉がちゃんと伝わってくる。そういうところもshing02は上手く汲み上げてると思う」。

フラワー・トラヴェリン・バンド @ 〈FUJI ROCK FESTIVAL〉 『SATORI』

曽我部「とりあえず、ジョー(山中)のあの高音ヴォーカルを生で聴きたい。フラワートラベリンバンドは他のアルバムも好きだけど、やっぱり『SATORI』が一番かな。なんか、たぎってる感じが好き。あと、実は日本的な情緒があるんだよね。でも彼らは、はっぴいえんどみたいに、その部分を押し出してたわけではないし、いまとなっては結局なんだかよくわかんない存在だと思われてる気がする。それは残念だよね。個人的には、彼らは繊細なハード・ロック・バンドだと解釈してる。キング・クリムゾンを聴くならこっちを聴いてって感じ。とにかく『SATORI』は本当にいいアルバムなんで、ぜひ聴いてほしいな」。

FATBOY SLIM @ 〈SUMMER SONIC〉 『Halfway Between The Gutter & Stars』

曽我部「これはもう盛り上がり大会でしょう。ファットボーイは直球勝負しかないところが良いよね。でも、ノーマン・クック自身は、ハウスマーティンズからビーツ(・インターナショナル)を経て、現在に至るまでのあいだに紆余曲折があったわけでさ。そのうえで、いま変化球なしでやってるからこそ、信頼してるし尊敬してる。最初からずっとリアルタイムで聴いて来た、唯一と言ってもいいアーティストだしね。彼の作品は基本的に曲単位でしか聴かないけど、このアルバムだけは、全体がひとつの風景であり人生である感じがして大好き」。

SEX PISTOLS @ 〈SUMMER SONIC〉 『Never Mind The Bollocks』

曽我部「この人たちがおもしろいのは、自分たちにとって唾棄すべき対象だった、権威的なロック・バンドになっちゃってるところ(笑)。そのこと自体が、世界に対するでっかくてピュアな悪意だよね。要するに〈お前らなんか嫌いだ〉ってことをずっと言ってる。期待に沿うことなんかしてやらない、ジミヘンやカート・コバーンみたいな伝説にはならないぞ、という。その一貫してるところが大好きだな。で、いまさら“God Save The Queen”をやるのは悪意なんだけど、みんなにとっては大きな善意でしかないじゃん。それでも〈No Future For You〉って歌い続けるわけでしょう。そういうことがつまり、〈I Hate You〉と〈I Love You〉が一緒ってことなんじゃないかな。とりあえず来るんなら見たいよねえ。すべてを台無しにしてくれそうで(笑)」。

頭脳警察 @ 〈ROCK IN JAPAN FES.〉ほか 『頭脳警察1』

曽我部「頭脳警察は、いまの銀杏BOYZにも通じるところを勝手に感じてるんだけど……でもロックインジャパンに出て、一体どうなっちゃうんだろう。見たいなあ。1曲目に“銃をとれ”をやって欲しい(笑)。PANTAさんがメガフォンでアジって。でも、そういう革命うんぬんを抜きにすれば、彼らはストレートなパンク・バンドだと思うから、いまでもちゃんと通用する存在だよね。しかし、10代の子がまかり間違って頭脳警察を見ちゃうってことが起こり得るんだもんなあ。いやあ、楽しみ!」。

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