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第12回 ─ 夏の終わりのチル・アウト

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2008/08/21   18:00
テキスト
文/bounce.com編集部

ご存知〈キング・オブ・メロウロック〉こと曽我部恵一のマンスリー連載! ご自身のお店〈City Country City〉でも素敵な〈手描きPOP〉を作っている曽我部氏が、タワーレコードのPOPを担当。独自のテーマでCD/DVD/書籍をチョイスし、その作品のPOP作りに挑みます。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開……というWEB&店舗の連動企画! さて今月のセレクション・テーマは〈夏の終わりのチル・アウト〉です。

  気がつけば8月も残りわずか。今回は、過ぎ行く夏を惜しみながら聴きたい、涼しげでチル・アウトな和み盤を選んでいただきました!

KLF『Chill Out』

曽我部「このアルバムが出たのは、セカンド・サマー・オブ・ラヴとかマンチェの時代だよね。当時ってオーブとかのアンビエント・ハウスはあったけど、クラブ・ミュージックなのにここまでビート・レスのものってなかったでしょ。で、ジャケットはピンク・フロイドみたいっていう。そこに持っていかれた。カントリー・テイストが入ってるのも面白い。のどかでユルいところに、突然ポップスとかのメロディーが通り過ぎていったりする。要するにサウンド・コラージュなんだよね。これはリアルタイムで聴いてたし、2000年前後に再発見して、またよく聴くようになった。あと〈テレタビーズ〉ってイギリスの子供向けテレビ番組があったじゃない? あれを見たときに、このアルバムを思い出したんだよね。ケミカルで牧歌的なところが似てるなあと」。

パードン木村『LOCALS』

曽我部「このアルバムもKLFに似てるよね。音楽とフィールド・レコーディングの境界線がぼやけてる感じ。しかも、すごく変。最後の方でダウンタウンの松ちゃんの声が入ってきたりするし(笑)、どうやって作ったのかとか、何をやりたいのかが、一切わからない。でも、聴いててめちゃめちゃ気持ちいい。ビーチでダラダラしてるような感じが延々と続く音楽。これこそアンビエントだよね。このアルバムは本当にずーっと聴いてる。パードンさんのなかでも一番好きなアルバムだし、プロデュースしてるヤン(富田)さんの作品としても一番。ヤンさんの音楽の地に足が着いたヴァージョンって感じがするな」。

真島昌利『夏のぬけがら』

曽我部「夏と言えば、マーシーのこのアルバムって感じ。ブルーハーツの熱い世界とはちょっと違う。日本の夏の情緒がすごくあるし、ジャケも最高。小学生の頃の夏休みの感覚をいつまでも覚えておくための音楽。マーシーの歌心って半端ないけど、それが一番よく出たアルバムじゃないかな。あと、これって何故か、ネオアコ心に訴えかけるアルバムなんだよね。〈CHERRY RED〉レーベルに通じる感じ。(ライターの)北沢夏音さんも好きって言ってたしなあ」。

PAT METHENY GROUP『Still Life(Talking)』

曽我部「これは大ヒット作だよね。“Last Train Home”に象徴されるような透明感が素晴らしい。パット・メセニーのギターの音って本当に前向きで、昇っていく太陽のような、風のようなイメージ。歌なしで、ここまで説得力のあるアルバムって珍しいんじゃないかなあ。パットは本当に大好きなんだけど、このアルバムが一番明快だし、お薦めできるかな。ちょっとジャズに寄り過ぎた印象がある90年代以降の作品はあまり聴いてなかったんだけど、新作は良かったよ。『Tokyo Day Trip』っていう日本でのライヴを収録したEP」。

KAITO『Special Love』

曽我部「KAITOはアルバムを出すと、その後にノン・ビートのヴァージョンも毎回出すんだけど、そっちがすごい好きなんだよね。これも『Special Life』ってアルバムのアンビエント・ヴァージョン。KAITOの渡辺くんが持ってるキラキラ感みたいのがよく出ている。KAITOの音楽って、普通のテクノとかハウスでは全然なくて、どこかクラシックみたいだよね。重厚というか感情的というか。だからDJでかけたりすることはまったくないんだけど、その感じがすごい好き。渡辺君とは今年、一緒に作ったアルバムをリリースしたんだけど、この夏は一緒にライヴもやることになったんだよ。それがすごい楽しみ」。

Cheekbone『ちぐはぐ』

曽我部「この人は〈MySpace〉で聴いて衝撃を受けた。アンビエントは昔から好きなんだけど、こんなものは聴いたことがなかったから。それですぐに連絡を取って、〈ROSE RECORDS〉から出すことにしました。奈良の結構田舎の方に住んでる人なんだけど、自分の住んでる風景、見ている風景をきっちり描いている。日本の音楽だなあと思うし、そこに感情がたっぷり入っている。いまは打ち込みにしてもバンドにしても、音楽のフォーマットっていうのができあがってるから、その型に即して作っちゃうことが多いでしょう。〈なんでレゲエをやってるのか〉みたいなことがおざなりになって、サウンドの追求だけに向かいがち。でもCheekboneは、この人の心の波が、こういう音楽として表現されてるんだなあというのがよくわかる。そこが好きだし、すごく尊敬してます」。

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