7月2日にニュー・アルバム『波紋クロス』を発表したnhhmbaseと9月19日に約5年ぶりのオリジナル・アルバム『I'm not fine, thank you. and you?』のリリースを控えている54-71が、タワーレコード渋谷店のインストア・ライヴに登場! 先日お伝えした楽屋裏速報その1、その2 に続いて、ガチンコ勝負を繰り広げた当日のステージングを詳細にレポートいたします!!
たった一音で世界が変わる――と言うと大袈裟だが、一曲目“ugly pray”の冒頭ワン・フレーズによって、真っ暗な地下フロアが危険極まる異空間へとあっけなく放り出されたことは紛れもない事実だ。この強烈な威圧感は何だ? たった4人が放つ音だ。だが、痛いほどに研ぎ澄まされた4つの音塊は明らかな圧力を持ってフロアを席巻し、居合わせた人々の意識をいとも簡単に支配してゆく。
新作『I'm not fine, thank you. and you?』のなかからラストの“life is octopus”を除いた7曲を収録順に演奏するという、〈この上なく贅沢な試聴会〉的セットリストを展開したこの日のステージ。ギターとベースが刻む強靭なリフを軸に、静謐から混沌へと劇的な展開を見せる“ugly pray”、闇のなかで脈打つようなベースラインが得も言われぬ不安感を誘う“idiot”、獰猛極まりない変拍子で攻め立てる“cosmetic overkiller”……。大いなる意志を持って配列された楽曲群が、荒涼とした世界観を厳粛に組み立ててゆく。
重厚なビートをストイックに鳴らし続けるプレイヤー陣の前で、ステージ上の〈アクション〉面を一手に引き受けるのはヴォーカルのビンゴ。上半身をジェルでコーティングしたルックスしかり、シュールとしか言いようのないポージングしかり、その予測不能なパフォーマンスは観客の目を惹き付けてやまない。“idiot”のブレイク部分での射撃、“ceiling”でのバレリーナをはじめ、この日はフェンシング、砲丸投げなどを採り入れた動きを次々と披露していたが、どうやらテーマは北京五輪と熊川哲也だったらしい。
MCはゼロ。振り絞るように連射される言霊が、ピンと張り詰めた緊張感をよりシリアスに高めてゆく。失神しそうなほどに殺伐とした空気と心身を揺さぶるグルーヴに獲り込まれたまま、ステージは終盤へ。
ハードコア～ヒップホップ～フリージャズを鋭く噛み砕き、血肉化しながら、驚異的な生命力を漲らせて躍動する鉄壁のヘヴィー・ロック。この日、54-71が見せた〈4人で音を発する〉というシンプルな行為は、まるで命の誕生を見るように刺激的かつ圧倒的に聴き手の胸に迫るものであった。あるべき音しか鳴らさずに、オリジナリティーに満ちた音楽を誕生させる――それは、鍛錬に鍛錬を重ねた技術と感性を有する匠のみが実現できる業なのだ。そんなことを、まざまざと思い知らされた約30分だった。
54-71 タワーレコード渋谷店インストア・ライヴ セットリスト
1. ugly pray
2. idiot
3. cosmetic overkiller
4. cracked
5. ceiling
6. that's the way
7. bloomin' idigod
▼54-71の作品
