今年で結成20周年を迎えた電気グルーヴが、記念ライヴ〈俺っちのイニシエーション〉を7月11日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催した。ゲストとして天久聖一、CMJK、篠原ともえが登場し、約4時間にも渡った(!)アニヴァーサリーな当夜の模様を、bounce.comでは詳細にレポートいたします!!
PHOTO by Kazuhiro Kitaoka
会場は、決して広くはない恵比寿LIQUIDROOM。当然ながら、オーディエンスはキャパいっぱいにひしめいている。そんななか、まずステージに現れたのは、オープニング・アクトを務めるお笑い芸人、ハリウッドザコシショウ。電気の熱狂的なファンという彼は、古畑任三郎のモノマネで、古風なお笑いセンスと狂気が入り混じったアヴァンギャルドな漫談を披露し、場内はなんともいえない微妙な空気に……。
しかし、続いてピエール瀧による映像作品〈体操42歳〉の初上映がスタートすると、一転して会場からは嬌声が沸き上がった。この映像は、瀧のライフワークと言える作品〈体操シリーズ〉の第3弾。モニターに映し出されたのは、段ボール製ロボットやヤマトタケル、〈火の鳥〉の我王などに扮した瀧の踊る姿。最後に瀧が白骨と化し、爆発音が轟いたところで、ディスコティックなシンセ・ベースがフロアを揺るがしはじめる。ややあって、タキシードで正装した石野卓球とピエール瀧、そしてサポート・メンバーのKAGAMIが登場。デビュー20周年を祝う記念ライヴが、いよいよ幕を開けた。
冒頭からステージ前方に陣取った卓球と瀧は、歌の入るタイミングを間違えて3回もやり直す(!)というユルさを見せながらも、サビで〈電気グルーヴ20周年!!〉と歌い上げるお祝いナンバーを1曲目に投下。その後も、8月19日にリリースされる新作『20』に収録されると思しき楽曲を次々と畳み掛ける。どの曲でも卓球&瀧が全編で歌いまくり! 時に椅子の上に立ってオーディエンスを煽り、時にロボット・ダンスや小島よしお風のダンスを披露したりと、二人のテンションもいつになく高い。電子音の快楽と、〈銭湯帰りに死体を見つけたの〉といった詞世界が絡むエレクトロニック歌謡の数々。電気の真骨頂がいかんなく発揮された新曲の連打に、オーディエンスも圧倒されっぱなし。
PHOTO by Kazuhiro Kitaoka
「電気グルーヴ改め、汚いPerfumeです!」と卓球が挨拶したところで、最初のMCがスタート。この日の卓球はかつてないほどの躁状態となっており、思いついた言葉を次から次へと放り投げ、ほったらかしにするので、トークは脱線に次ぐ脱線を繰り返すばかり。「瀧、〈ゲッツ〉やれよ!」と一発ギャグを強要したかと思えば、「お前をスケベ椅子にしてやる!」と観客を唐突に威嚇。はたまた〈通勤快速〉から〈通勤快足〉、さらに〈口臭街道〉へとトピックは秒刻みでスライドしていくという……書いてみたところでまったく伝わらないであろう話芸を延々と放射し続ける。瀧は「いちいち付いて来なくていいからね~」と観客に注意を促し、卓球も「これを20年やってきてるから。ポッと出の狂人とは違うでしょ」と誇らしげに語っていたが、そのあまりの無秩序っぷりには爆笑させられる一方で、戦慄すら覚えてしまった……。
そんな狂ったMCの後は、瀧にフォーカスしたセットへ。まずは寺尾聰“ルビーの指輪”にオマージュを捧げたというソロ曲“エンジのソファー”を初披露すると、お次は、かつて〈瀧勝〉名義で発表した演歌“人生”を着流し姿で歌い上げる。そして卓球が「みなさんモテたいですか? 僕たち、いい歳してまだモテたいんです!」と叫ぶと、スクリーンには〈ようこそ天沢聖一〉の文字が。ここで漫画家、天久聖一と瀧とのユニット=イボピアスが久々に降臨し、“モテたくて…”が繰り出された。天久は日本兜にバニーガールの衣装、瀧はオレンジのレオタード姿。卓球いわく「出来の悪いオカマ・バーのショーだよね。これが20年の重み!」。
ここでふたたびMCに入ると、「今日はいろいろゲストが出るけど、残念ながら日出郎は出ません! でも、日出郎よりはちょっと落ちるゲストが袖でスタンバってるんで」と卓球。あんまりな前振りと共に呼び込まれたのは、なんと電気のオリジナル・メンバーであるCMJK。この3人で何を聴かせてくれるのかと思えば、まずは、電気のファンクラブ会員のみに配布された楽曲 “電気グルーヴインフォメーションの詩”。CMJKみずからシーケンスを組んだというエレクトロ・ディスコなニュー・ヴァージョンでフロアに熱気を吹き込むと、そのまま“マイアミ天国”へ。オリジナルに近いオールド・スクール・エレクトロなビートを打ち鳴らし、CMJKはステージを後にした。
PHOTO by Kazuhiro Kitaoka
続けて投入された“Disco Union”では、途中でマイケル・ジャクソン“Smooth Criminal”を挿入。瀧はそれに合わせて“Thriller”のPV風のダンスやムーンウォークを適当にこなしてみせる。そこに少しづつ“クルクルミラクル”のシーケンスがミックスされはじめ……ここで3人目のゲストとして篠原ともえが飛び跳ねながらステージに登場した。彼女は“電気ビリビリ”の卓球パートを見事に担当。キュートなドレスの裾をふわふわ揺らしながら飛び跳ねる彼女の姿に、大きな歓声が上がった。
ともえ嬢を交えて、これまた長~いMCを繰り広げたところでもう21時。「マジで!? まだ半分しかやってないのに……」と卓球が話した通り、ここに至ってやっと折り返し地点に到着。後半戦は、“モノノケダンス”などの近作『J-POP』『YELLOW』のナンバーから、“あすなろサンシャイン”といった往年の電気クラシックまでを怒涛の展開で繋ぎ合わせ、場内を大レイヴ大会へと導く。“Acid House All Night Long”では、KAGAMIの名曲“Tokyo Disco Music All Night Long”をマッシュアップして聴かせ、“CATV”では瀧が自転車タイヤ用の空気入れで華麗なソロ(?)を披露。沸点に達したフロアにさらなる熱狂を注ぎ込む。そして、“誰だ!”“かっこいいジャンパー”の2連打で本編を締め括り、3人はステージを後にした。
アンコールでも卓球&瀧は超ロングMCに突入。ライヴ中に摂取し続けたビールの影響か、卓球のトークのカオスっぷりはここにおいて臨界点を迎え、ダジャレから昔話まで際限なく喋り続ける。現役時代の長島茂雄の話を繰り広げた後に「はっ、Perfumeの話をしないとおじさんだと思われる!」とのたまい、猪木のモノマネをひたすらループした挙句、「瀧、エド・はるみやれよ!」と、またもや一発ギャグを強要する。あまりの無秩序トークに瀧が「もう(曲を)やろうぜ!」としびれを切らし、ようやく“カメライフ”などを披露。終わってみれば、開演からなんと4時間近くが経過! 電気のライヴ史上でも随一の長丁場を記録し、かつその半分近くをMCが占めるというクレイジーな一夜となった。