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第23回 ─ キッスとシド・ヴィシャスに学ぶ、ロックは爆発だ!

連載
曽 我 部 恵 一、 POP職 人 へ の 道
公開
2009/07/15   18:00
更新
2009/09/15   00:08
テキスト
文/bounce.com編集部

 キング・オブ・メロウロックが〈手書きPOP〉に挑むマンスリー連載! 曽我部恵一がいま現在気に入っている作品をストレートにレコメンド。曽我部氏の主宰レーベル、ROSEの最新リリース作品と合わせてご紹介します。完成したPOPとセレクション・アイテムは、タワーレコード新宿店の〈曽我部コーナー〉にて展開しますよ! 今月はロックと爆発の親密な関係について。

  アルバム『ハピネス!』、カヴァー・ミニ・アルバム『ソカバンのみんなのロック!』と、立て続けに作品をリリースしたソカバン。そんな多忙ななか今回は、〈ロックとはなんなのか!?〉についてアツく語るところからスタート!

曽我部「人様をいい気持ちにさせるものなんかじゃなくて、何かを爆発させるのがロックなんだよね。〈明日も頑張ろう〉とか、〈貴方のことを見守ってますよ〉みたいなものは、ロックとは関係がないメッセージの世界だもん。ジミヘンが白目をむいて〈ギュイーン〉とチョーキングしている瞬間がロックであって、もうただの射精と一緒ですよ。誰のためにならなくてもいい。聴いた人が嫌がる作品を作ってやる、誰も綺麗だと思わない作品を作ってやるっていうのがロックだから。岡本太郎と一緒ですよ。やっぱりね、ロックは爆発だと思います」。

◆今月の曽我部セレクション

KISS『Alive!(邦題:アライヴ!~地獄の狂獣)』Mercury(1975)

曽我部「これは前にも買ったことがあったんだけど、どう聴いたらいいのかわからなくて売ってるんです。だから買うのは2回目。キッスとかAC/DCは、アメリカ人のおっさんの気持ちになって聴くとすごく楽しいってことに気付いて。アメリカ人って人種的にコンセンサスを無理矢理見つけないといけないと思うんです。黒人も白人もいる環境で共有できるのが、8ビートみたいなシンプルなものなんじゃないかな。このアルバムにはアブストラクトな部分がないんですよ(笑)。わかりやすくすることに必死な感じ。そこに込められた気合がいいなと思って。いまの僕が目指しているところに通じるものがある」。

SID VICIOUS『Sid Sings』Virgin UK(1979)

曽我部「パンクを考えるときに、シド・ヴィシャスは避けて通れない。だらしがなくて、音楽の才能がなくて、ただパンクなだけの男だった。こんなに才能がないヤツがスターになれるのはパンクしかないもん。シド=パンクってことでいいんじゃないかな。シンプルなロックンロールの復権とかDIYの象徴みたいに、パンクっていう言葉が地位を得て、褒め言葉になってしまってる。けど、僕が子供のころ好きになったパンクはチンピラのムーヴメントだった。だから、パンクが〈いいもの〉として扱われるのを見ると居心地が悪くて。シド・ヴィシャスをパンクのアイコンとして考え続けなきゃいけないだろって思うんですよ。こんなのレコードとしては全然よくない(笑)。でも、これをパンクの一番の代表作として挙げるべきだと思う」。

◆今月のROSE RECORDS

LANTERN PARADE『a selection of songs 2004 - 2009』ROSE(2009)

曽我部「清水君は、デモテープが最初に送られて来たときから出来上がってた。会う前は、おシャレとかサブカルチャーが好きな人なのかなと思ったら、そういうのとは無縁の青年で。この人は音楽に対してほんとうにまっすぐなんですよ。今回、はじめてROSE側がコントロールした作品を作ることになって。ランタンは作品数がすごく多いから、僕らとしては入門編として聴いてもらえればと考えて作りました。今後は作風が変わっていくらしいんで、これからも楽しみですね」。

島津田四郎『つぶやきタシロー』ROSE(2009)

曽我部「この人も変わってますね。彼の音楽は、ものすごくサイケだと思うんです。朴訥系のサイケ。常に音がトリップしている感じですね。ブラジルのアコースティックな人たち、ジョアン・ジルベルトなんかに通じるサイケ感がある。でも、本人はブラジルを意識しているわけじゃない。土着的な音楽というか、原住民の音楽っぽいというか……。基本的に彼の曲にはタイトルがないんだけど、今回本人に付けてもらったらこうなりました。このタイトルは、よくわかんない(笑)」。

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