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第108回 ─ クラムボン @ 日比谷野外大音楽堂 2009年10月10日(土)

連載
ライヴ&イベントレポ 
公開
2009/10/21   18:00
テキスト
文/土田 真弓

 今年でデビュー10周年を迎えたクラムボンが、10月10日(土)=10並びの日に記念ライヴ〈クラムボン 10月10日に10周年 ありが10!!!〉を開催した。会場に入りきれなかったオーディエンスも含め、その場にいた全員で作り上げた当日のステージの模様を、bounce.comでは詳細にレポートいたします!

  場内への入り口ではシャボン玉が配布されており、さらに横を見れば、壁面いっぱいにメッセージ・ボードが掲示されている。観客たちによる〈お祝いの言葉〉でカラフルに埋め尽くされたそのボードを眺めていると、〈ああ、これから始まるアニヴァーサリー・ライヴはここにいる全員で作り上げるんだな……〉なんて気持ちが込み上げてくる。

 スーツ姿で会社帰りに駆け付けたふうの人も、若い両親といっしょに参加したであろう子供たちも、老若男女が等しくリラックスした面持ちでシャボン玉を空中に浮かべるなか、いよいよクラムボンの10周年記念ライヴ〈クラムボン 10月10日に10周年 ありが10!!!〉が幕を開けた。


写真/真田敬介

  アニヴァーサリー・デイということを意識してか、白を基調とした正装で登場した3人。原田郁子の「おまたせ~!!」という声を合図に始まったのは、“みつばち”だ。ファースト・シングル“はなればなれ”のカップリングという激レア曲をオープニングに据えたことには意味があるわけで……この日はデビュー作から最新作まで、〈クラムボンの10年史〉的に年代順で構成されたセットリストが用意されていた。

 ゆるやかにスウィングするピアノと上空へ伸びやかに広がる歌声に身を任せていると、今度は1作目『JP』と2作目『まちわび まちさび』の冒頭曲――“はなればなれ”“ドギー&マギー”といったリスナーにはお馴染みのナンバーが続く。合間にソロ・パートを巧みに入れ込みながら、柔らかに、けれど強力に観客の意識を惹き付けるパフォーマンスを繰り広げる3人。「うおーっ!」と雄叫びを上げるミトに向かって、観客も歓声で応える。


写真/真田敬介

  ドラム・ソロの開始と共に、ここでいよいよ郁子嬢もスタンディング。「カモン!」といった素振りで観客を煽るミトに反応し、ハンドクラップが会場全体から沸き起こる。期待感が徐々に高まり、頂点に達したところで刻まれたイントロは……“シカゴ”だ。ハッピーなヴァイブで聴き手の心を大いに浮き立たせる楽曲だが、途中にはベース→ピアノ→ドラムとそれぞれのソロを盛り込んで、ライヴならではの見せ場を演出。〈歌〉という揺るぎない軸があるものの、3人が刻んでいるのはほぼすべてがリズム・パート。そのリズムの集合体をポップ・ミュージックとして軽やかに表現できてしまうのが彼らのすごいところだ。スキルの高さはもちろん、各々のなかに宿っているミュージシャンシップは、いっそシリアスと言っていいほどに厳しいのでは?……などと考えていると、ここで最初のMCが。

ミト「まず最初に、みんな、来てくれてホントにありがとう!」

郁子「今年は10月の10日に野音で(ライヴを)できることになって、そう言えば10年だね、ってことで……今日はこれ以上ない日だと思う。ありがとう!! ……ってことで今日は、濃いぃ~よ(笑)」

ミト「みんなビックリしたと思うけど……1曲目から“みつばち”っていうね」

郁子「これね、“はなればなれ”のB面っていうの? カップリングに入ってた曲で、アルバムには入ってないの。だから(めったに)聴けない、聴けない。なぜなら全然ライヴでやってないから(笑)。でもやりたかったんだよね……今日はそういう曲、いっぱいやります!」


写真/真田敬介

  そんな宣言に驚喜し、大喝采する客席に応えるように、3人はサイバーなシンセ・リフとパワフルなリズム隊がロッキッシュに疾走する“ロマンチック”へ突入。クラムボン流のパンク・ナンバーとも言える同曲を演奏し終えたミトは、「あの頃はヤンチャでした。若さを取り戻すために演奏しております(笑)」と、照れくさそうに語る。だが、そんな言葉とは裏腹に、彼のプレイはこの10年、いつだって変わらずアグレッシヴだ。“ララバイサラバイ”のラストで床に崩れ落ち、ベースの旋律にエモーションを託す姿が10年前の彼とオーバーラップする。

 そして、浮遊する電子音と柔らかなギターがたゆたう“id”によってディープな音世界を現出させた中盤では、ミトから10周年に輪をかけておめでたい発表が。

ミト「実はね、僕の話なんですけど、12月に新譜が出るんですよ。〈ベイビー〉っていう……それで本当の子供がね、12月に生まれてくるんですよ。〈ビバ! 子ども手当!〉っていうね(笑)」。

 「おめでとう!」――客席のあちこちから祝福の声が上がる。

ミト「でね……実はそこに隙間があるじゃないですか……いまからウチらそこに行きますんで」

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