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『地方都市オーケストラ・フェスティバル2010』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2010/02/26   18:07
更新
2010/02/26   18:52
ソース
intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)
テキスト
text:山野雄大

 

オーケストラを染める、街の風をたしかめに。

街を歩いていて、ふるさと物産展の類を見かけるとつい足をとめてしまうのだが、そこの出身でなくともなにか惹かれてしまうのは、〈土地〉の持つ吸引力に自分の郷愁を重ねてしまう、本能的なものなのかも知れない。…と、心を引き寄せるのは味覚視覚ばかりではない。聴覚で愉しむ街の空気感、というのもある。年に一度、東京・錦糸町のすみだトリフォニーホールで開催され今年で13回目となる『地方都市オーケストラ・フェスティバル2010』がそれ。

日本各地で活躍するオーケストラが同じホールへ次々来演する音楽祭だが、面白いことに、クラシック音楽という共通語を響かせあっていながら、楽団ごとの独特の響きから、プレイヤーたちが日々暮らしている街の風をふと感じる瞬間があるのだ──お国がらの違い、ともまた異なる、街の呼吸の違い。東京の場合は群雄割拠の厳しさを(いい意味で)感じることが多いのに対して、各地の楽団の場合、実際に取材してみるとよくわかるのだが、音楽家が日々暮らしている時間感覚が街によって違うし、その差がサウンドにもどことなく香るから面白い。

今年は5団体が来演する。まずは大阪シンフォニカー交響楽団(20日)。個性の色も濃い楽団たちが競い合う大阪でも、よそでは聴けない大胆な選曲で邁進 中。多彩な選択肢を提供してこそ聴き手も音楽家も耕されてゆくことを実感させる気鋭の楽団だ。児玉宏(音楽監督・首席指揮者)と共に、熱く華麗なロシアの 抒情・グラズノフの交響曲第5番ほか。翌日は大阪センチュリー交響楽団(21日)。府の財政見直しから楽団の存続が危ぶまれる事態に直面、市民運動も巻き 起こるなか、オーケストラの存在意義を厳しく見つめ直して奮起する勢いがサウンドをあらためて磨く。小泉和裕(音楽監督)と共に、ブルックナーの交響曲第 4番《ロマンティック》ほか。さらに翌日は〈楽都・仙台〉を標榜する杜の都から仙台フィルハーモニー管弦楽団(22日)。パスカル・ヴェロ(常任指揮者) ほか新しい指揮者陣を迎えて以来、色彩感を豊かに広げたあたりはCDにも見事に結実。その巧みなバランス感覚をストラヴィンスキー《ペトルーシュカ》ほか 気合いの入った選曲で。

翌週は群馬交響楽団(27日)。東京から聴きに行くのもたやすいが、本拠地・高崎のホールがオーケストラにはちょっと不利な響きなので、楽団が大編成作品 でみせる誠実なる底力をすみだトリフォニーホールで味わえるのは好機だ。ストラヴィンスキー《春の祭典》をはじめフランスにちなんだ心にくい選曲を梅田俊 明の指揮で。そして最後は京都市交響楽団(28日)。新しい常任指揮者に広上淳一を迎え、古都の余裕を薫らせる楽団にも快い刺激が続く新時代へ、今回も世 界的ホルン奏者ラデク・バボラークをゲストに迎えた協奏曲や、ベートーヴェンの交響曲第4番など。──いずれも土日・祝日のコンサート、街めぐりの気分で 愉しみたいところだ。きっと、遠い街の風の色が心に残る。

 

 

『地方都市オーケストラ・フェスティバル2010』
会場:すみだトリフォニーホール

3/20(土)15:00開演 大阪シンフォニカー交響楽団 児玉宏(指揮)
ウォルトン:バレエ組曲「賢い乙女たち」(バッハの曲による)
R.シュトラウス:クープランのクラヴザン曲による小管弦楽のためのディヴェルティメントop.86
グラズノフ:交響曲第5番変ロ長調op.55
http://www.sym.jp

3/21(日)15:00開演 大阪センチュリー交響楽団 小泉和裕(指揮) 小川典子(P)
リスト:ピアノ協奏曲第1番変ホ長調S.124
ブルックナー:交響曲第4番変ホ長調「ロマンティック」
http://mic.e-osaka.ne.jp/century/

3/22(月・祝)15:00開演 仙台フィルハーモニー管弦楽団 パスカル・ヴェロ(指揮) 佐藤ひさら(S) 倉戸テル(P)

ベルリオーズ:序曲《ローマの謝肉祭》op.9
フローラン・シュミット:バレエ組曲《サロメの悲劇》op.50
バーバー:アンドロマケーの別れop.39
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)
http://www.sendaiphil.jp

3/27(土)15:00開演 群馬交響楽団 梅田俊明(指揮) 清水和音(P)
モーツァルト:交響曲第31番ニ長調K.297《パリ》
ラヴェル:ピアノ協奏曲ト長調
ストラヴィンスキー:バレエ音楽《春の祭典》
http://gunkyo.com/

3/28(日)15:00開演 京都市交響楽団 広上淳一(指揮) ラデク・バボラーク(hr)

京響ホルン奏者:垣本昌芳(首席)、澤嶋秀昌、寺尾敬子
プッチーニ:交響的奇想曲
シューマン:4本のホルンのための小協奏曲ヘ長調op.86
R.シュトラウス:ホルン協奏曲第1番変ホ長調op.11
ベートーヴェン:交響曲第4番変ロ長調op.60
http://www.city.kyoto.jp/bunshi/symphony/
*各公演とも開演30分前より指揮者によるプレ・コンサート・トークあり(開演45分前に開場)
すみだトリフォニーホール http://www.triphony.com