こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

BLUR

連載
NEW OPUSコラム
公開
2010/03/03   18:30
更新
2010/03/04   15:02
ソース
bounce 318号 (2010年2月25日発行)
テキスト
文/妹沢奈美

9年を経て、ふたたび手を結んだ4人の物語。もう彼らの友情を隔てるものはないんだよ!

 

 

「仕事じゃなくて、いま自分たちがやっていることは遊びさ」――そう話すデーモン・アルバーンの声色には、90年代のブリット・ポップ以降に彼が背負った悲壮感はない。だからだろう、昨年行われたブラーのツアーを追った映画「No Distance Left To Run: A Film About Blur」を観ていると、初期衝動に貫かれた新人バンドを目の当たりにするかのような清々しさが込み上げる。しかも年齢を重ねたいまだからこそ、この4人組の〈衝動〉はむしろロマンティックなまでに純粋だ。ご存じの方も多いと思うが、ギタリスト=グレアム・コクソンの脱退で空中分解したブラーは昨年見事復活を遂げ、〈グラストンベリー〉やロンドンはハイド・パークでのライヴを含む9年ぶりのツアーが大成功のうちに幕を閉じた。今回リリースされた本映画収録の2枚組DVDのDisc-1はドキュメンタリー編となり、小学校時代のデーモンとグレアムの出会いに始まるブラー結成以前のエピソード~バンドのデビュー~ブリット・ポップの狂騒とそれによる疲弊~グレアムが他3人との気持ちのズレが原因で脱退~バンドの崩壊~グレアムとデーモンが再会して活動再開、というブラーの歴史がメンバーのインタヴューと共に描かれている。意外なエピソードも満載で、彼らがいかに最初からオルタナティヴな資質のバンドだったかも検証できるだろう。またDisc-2のライヴ編、ハイド・パーク公演でのパフォーマンスを収めた映像では、グレアムの言葉を借りれば〈感情を脇に置いて仕事ができる〉タイプのデーモンが実は誰よりも感情的で、そして友情という絆を拠りどころにしていたかが何より切ないほど伝わってくる。

さらにこの模様はライヴCD『All The People Live At Hyde Park』でも確認できる。しかし涙腺の弱い人は心の準備をおすすめしたい。

 

▼文中に登場した作品を紹介。

左から、ブラーのDVD「No Distance Left To Run: A Film About Blur」(CUK/EMI Music Japan)、ライヴCD『All The People Blur Live At Hyde Park』(Live Here Now/EMI Music Japan)