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Efterklang 『マジック・チェアーズ』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2010/04/23   17:53
更新
2010/04/23   17:58
ソース
intoxicate vol.84 (2010年2月20日発行)
テキスト
text:池田敏弘(新宿店)

Efterklangはデンマーク、コペンハーゲン出身。2000年に結成された4人のメンバーを中心とするユニットで、エレクトロニクスとオーケストラを融合させ、まるでクラシックの様な複雑な楽曲構成を持ち、非常に高い音楽性と独自性で様々なメディアから高い評価を得ている。そんな彼らの動向をいち早く捕えたのはイギリスのLEAFレーベル。ストリングス、ブラス、合唱などとエレクトロニクスを織り交ぜ完成させた『Tripper』(2004年)によりデビュー。私自身の経験として、その『Tripper」に触れて、まさに世界で新しい音楽が生まれつつある事を実感し、非常に興奮したのを覚えている(Goldmundの『Corduroy Road』(2005年)を聴いてさらに先鋭的な耳を持つ音楽家に起きている同時多発的な感覚なのだという確信を持った)。その後は実際に世界中より、そういったポスト・クラシカル的傾向を内包した音楽が続々生まれており、今現在もその動向が進行中である。

2007年にはセカンドアルバム『Parades』をリリース。30名を越えるミュージシャンが参加し18カ月もの制作期間を経た本作では、彼らの創作意欲は絶頂にまで達し、セカンドにして金字塔的な作品を打ち立てたと言えるだろう(『Parades』をデンマーク国立管弦楽団とのコラボレーションにより再構成した『Performing Parades』(CD+DVD)も2009年10月にリリースされた)。

Efterklangの名前はアンダーワールドのカール・ハイドが賛辞を寄せた事でも一躍耳の早いリスナーやメディアから絶賛を持って受け入れられる事となる。

イギリスの老舗【4AD】に移籍し、プロデューサーにデペッシュ・モード、モグワイなどを手掛けるガレス・ジョーンズを迎えての本作は、前作までの複雑な音楽性が更に高みを見せるのかといろいろと思いはぐらせたが、全く持って嬉しい裏切りがあった。何と今回はポップ・ソングへと歩みを寄せているのである。前作までの複雑な構成の中でよりも、よりEfterklangの持つ美しいメロディーが際立って聴こえてくる。ポップスのフォーマットに寄っては居るが、何ひとつ後退している事はもちろん無い。過去の作品で見せてくれた深い音楽素養から来るアレンジセンスや独創的なアコースティック、エレクトロニクスの使い方はより匠の域に達している。今回はレコーディング手法もより簡素にし、掛った時間はこれまでで最短時間だったそうだ。また、ミキシングもガレスが行い(これまではメンバーのマッズ・ブラウアーが手掛けていた)全く新しい音像を打ち立てようという気概がこの辺りからも感じられる。この次にどの様な方向性を見せてくれるのか、今から非常に楽しみだ。

なお、Efterklangはポスト・ロックとポスト・クラシカルの感性を折衷させた今非常に注目のテキサスのバンドBalmorheaとのUSツアーも決まっている。