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『シカゴ』のロブ・マーシャル監督 待望の最新作 『NINE』!

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2010/09/21   19:12
更新
2010/09/21   19:20
ソース
intoxicate vol.87 (2010年8月20日発行)
テキスト
text:渡邊琢磨 aka COMBOPIANO

小馬鹿にされてもいい、翻弄されてもいい、女性と戯れて一生を終えたい!

年を追うごとに女なしでは生きられない、と深く実感するようになった。自信満々、自意識過剰な男が経年経過に伴い、己の無能さ非力さを自覚しそれでもプライドとエゴにしがみついてアクセクする。そんな日々の波間をぬって現れる女、女、女。「音楽がすべて」とか豪語していた若かりし自分は遠く霞んで、今や女友達と飲む為ならレコード50枚くらい平気で売っ払う人間に落ちぶれた。単純明瞭であったはずの人生が人間関係や欲や女や酒によって複雑怪奇なカオスに成り果てた。

本作の主人公は極度のスランプに陥っている。映画が作れない、脚本が書けないと不平不満、泣言のオンパレード。そんな女々しい伊達男をあらあら可哀相と慰める女、女、女。翻弄され、絶望し、それでも女なしでは生きられない。別に苦悩する人間の作るものが最高だなんて思わないが、試行錯誤を繰り返す人ってのは、他者の理解賛同を得られないような怒りや不安や悩みを抱え込んで苦悶するものだし、傍迷惑だし、刹那的だし、ロクでもない。血眼になって作ったものが片っ端からネットにダダ漏れするこの御時世、そんな不安感や孤独感やスランプなど霞のようなものだが。

フェリーニの不朽の名作『8 1/2』をベースとしたミュージカル『NINE』。本作はその映画化である。ダニエル=デイ・ルイス演じる主人公は悩みや不安を打ち明けても一蹴されず、女に愛され、妬ましい限りだ。オレは女性の提言苦言というのはどうにも受け流せない。もの凄く反論したくなるか、もの凄く同調してしまうかのどちらか。適当な相づち打てない。だから常に愛憎感情が表裏一体だし、本作の主人公のように多幸感と悲壮感を矢継ぎ早に味わうハメになる! あー早くこの地獄から抜出したい。

しかし相変わらずペネロペは奇麗だし、ジュディ・デンチは『007』のMと役柄ダダ被りだし、オレと同い年のマリオン・コティヤールも可愛くなっていた。そんな素敵な女、女、女。美女達が歌ったり、踊ったり、そんな艶やかな名シーンの数々を観て独り思いましたよ、小馬鹿にされてもいい、翻弄されてもいい、女性と戯れて一生を終えたいなぁ、ってね!!