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RAPPERZ R N DANJA!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2010/11/01   13:37
更新
2010/11/01   13:38
ソース
bounce 326号 (2010年10月25日発行)
テキスト
文/出嶌孝次、升本 徹、高橋芳朗

 

GUCCI MANE

 

ジョージアのお尋ね者が早くも降臨!!

みずから率いる1017ブリック・スクワッドから、OJ・ダ・ジュースマンに続いてワカ・フロッカ・フレイムという新たなタレントを輩出し、もはやシーンの一大クルーのトップとしての堂々たる風格すら漂わせているグッチ・メイン。自身の活動はと言えば投獄中のリリースにもかかわらず余裕の大ヒットを記録した前作『The State Vs. Radric Davis』以降も、数々の客演や『Burrprint(2)HD』をはじめとするミックステープのリリースでシーンを常に賑わせ、その絶倫な創作意欲に衰えはまったくないのだが、今春の出所からわずか5か月、早くも最新オリジナル・アルバム『The Appeal: Georgia's Most Wanted』を完成!

前作路線を踏襲するようにスウィズ・ビーツの手掛けた先行曲“Gucci Time”やファレル&ニッキー・ミナージュ参加のキャッチーなスムース“Haterade”、ロドニー・ジャーキンス作でバン・Bを伴った“Little Friend”などのキー・トラックを要所に配置しつつ、ゼイトーヴェンやドラマー・ボーイらとのストリート向けなコラボでは中毒性高めでクセになるお得意の鼻歌混じりなラップを披露。絶妙な安定感で仕上げており、まだまだグッチ・タイムが続くことを実感させられる。*升本 徹

 

▼グッチ・メインの近作を紹介。

左から、2009年作『The State Vs. Radric Davis』、2010年のストリート・アルバム『Burrprint(2)HD』(共に1017 Brick Squad/Asylum)

 

WAKA FLOCKA FLAME

 

 

あのブライテスト・ホープが超待望のアルバムを投下!!

母親がグッチ・メインのマネージャーだったこともあってかソー・アイシー~1017ブリック・スクワッド軍団の若手として頭角を現し、昨年のデビュー・シングル“O Let's Do It”で大々的に脚光を浴びたワカ・フロッカ・フレイム。今年に入ってから母親がグッチに解雇された関係で不穏な噂も流れていたのだが……ワカは別れではなく和解を選び、無事にファースト・アルバム『Flockaveli』がリリースされた。

で、元からそういう予定だったのかはわからないが、グッチやOJ・ダ・ジュースマンといった1017の兄貴分は参加はナシ。ただ、そのことが逆に荒々しいワカの若々しいパワーを前面に押し出してみせる結果となったのは間違いないだろう。“O Let's Do It”や“No Hands”といったヒット・シングル群も最強だが、どこを切ってもスキさえあれば〈わか、わか、わか、わか〉〈ばう、ばう、ばう〉と吠えまくる奇妙なテンションがとにかくヤバい! ほぼ全曲を気鋭のレックス・ルガーに委ねたのも、名のあるトラックメイカーがズラリと並ぶ昨今のメジャー作品とは一線を画すものだ。とにかく、ドラッギーな変態ループとヒプノティックな号令の不穏な奔流を浴びて中毒にならないのは不幸である。同じアホなら……。*出嶌孝次

 

▼関連盤を紹介。

ワカ・フロッカ・フレイムも参加したトゥイスタのニュー・アルバム『The Perfect Storm』(GMG/EMI)

 

LIL WAYNE

 

大作志向をフットワークの軽さでかわした、今年2枚目の新作!!

当の本人は獄中で過ごす時期が長かったとはいえ、現時点で振り返ってみれば2010年もやはりリル・ウェインの天下に揺るぎはなかったと言える。昨年末にクルー盤を出したヤング・マネーからはブレイクが約束されていたドレイクに続いてニッキー・ミナージュやタイガ、ガダ・ガダが大きく飛躍し、ウェイン本人のロック・アルバム『Rebirth』も賛否両論を招きながらキッチリとヒットに至っている。そんななか、当初は出所を祝うEPとして企画された作品が急遽アルバムに発展したのが、やや唐突に登場した『I Am Not A Human Being』である。10曲入りの配信ヴァージョンが先行でリリースされ、すでに全米2位をマークしているが、このフィジカル盤はそこに3曲を加えたものだ。成り立ちが成り立ちだけに録音時期も多岐に渡る印象で、昨年のミックステープ『No Ceilings』で披露済みだった“I'm Single”があったり、表題曲が『Rebirth』路線のロックだったり、ある種の寄せ集めっぽさは否めないが、逆にこのフットワークの軽い感じこそがミックステープで時代を作ったウェインらしい部分だと言えないだろうか。大作を期待されている次作『Tha Carter IV』も楽しみだが、ほぼヤング・マネーの仲間で固めたラフな仕上がりの本作もまた最高なのだ。*出嶌孝次

 

▼関連盤を紹介。

左から、リル・ウェインの2010年作『Rebirth』、ヤング・マネーの2010年作『We Are Young Money』(共にYoung Money/Cash Money/Universal)

 

LIL BOOSIE

 

 

崖っぷちに立たされたスーパーバッドの明日はどっちだ!?

2005年ごろからじわじわと人気を拡大し、いまやルイジアナを代表するヒップホップ・クルーとなったバトンルージュの雄=トリル。その快進撃をウェビーと共に支えたのが、XXL誌の初代〈The 10 Freshmen〉に選出されたリル・ブージーになるわけだが、本格ブレイクが期待された矢先、勝負作『Superbad』リリース直後の昨年9月に大麻所持などで2年の懲役刑を受けたのは痛恨だった。しかも、その2か月後には保護観察違反で刑期が4年に延長。さらに今年6月には第一級殺人罪でも起訴され、有罪判決が下されると死刑になる可能性も出てきている。

もっとも、そんな抜き差しならない状況下にあっても当のブージーは相変わらずタフというかなんというか、『Last Dayz』なるショッキングなタイトルのドキュメンタリーに続いて、〈投獄〉を意味する新作『Incarcerated』を発表。ルイジアナの司法制度に抗うエモーショナルな“Devils”からカートゥーン・キャラクターを詠み込んでいくワードプレイもの“Cartoon”まで、持ち前のフリーキー・ヴォイスを駆使して改めて地力の確かさを誇示する内容は、この希有なタレントの魅力をいま一度シーンに問うことになるだろう。引き続き、裁判の行方に注目したい。*高橋芳朗

 

▼関連盤を紹介。

リル・ブージーの2009年作『Superbad: The Return Of Boosie Bad Azz』(Trill/Asylum)

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