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映画『クリスマス・ストーリー/UN CONTE DE NOËL』アルノー・デプレシャン監督インタヴュー

カテゴリ
o-cha-no-ma CINEMA
公開
2010/11/08   20:40
更新
2010/11/08   20:54
ソース
intoxicate vol.88 (2010年10月10日発行)
テキスト
interview & text:村尾泰郎

フランス映画界の俊英、アルノー・デプレシャンが奏でる〈家族〉というシンフォニー

フランス映画のエスプリを受け継ぐアルノー・デプレシャン監督の新作『クリスマス・ストーリー』。カトリーヌ・ドヌーヴやマチュー・アマルリックなど個性豊かな出演者の共演も華やかな本作は、多彩なエピソードが複雑に絡み合い、響き合うシンフォニックな映画だ。物語の舞台はクリスマスの夜、老夫婦のもとに子供達とその家族が帰ってくる。白血病だと診断された母親や、生真面目な長女、厄介者の次男など、人の数だけ生まれるドラマをデプレシャンは巧みに交差させていく。

「この映画ではいろいろなストーリーが複雑に絡み合っていきますが、それはとても軽快で楽しさに満ちたものです。例えば子供の頃、複雑に入り組んだ話を聞いて楽しかったことってありますよね? いろんなストーリーが衝突したり複雑に絡み合ってスピードアップしていく楽しさ。だから今回の映画では、複雑に入り組んでいても踊るようなリズムで語ることを心掛けました」

確かに本作からは音楽的ともいえる心地良いグルーヴを感じることができるし、ヒップホップやジャズ、クラシックなどジャンルを越えた音楽の使い方も鮮やかだ。様々なジャンルの音楽を使うことで、デプレシャンは登場人物の背景や感情を表現していく。

「その点に関してはマーティン・スコセッシの映画から影響を受けています。私が音楽を決めるのは編集の時なのですが、この映画には様々な筋があり、それぞれの筋が様々なジャンルに属しています。例えばロマンティック・コメディーやメロドラマ、ファンタジーなど、れぞれの筋の持っているジャンルを強調するような音楽を探して使っているのです」

エピソードと音楽を巧みにミックスしていくデプレシャン。映画のなかで三男のイヴァンがクラブでDJをするシーンがあるが、そこにデプレシャンの姿が重なって見えてくるようだ。

「確かにイヴァンがDJをしているシーンを観ると、映画の原則を目の当たりにしている気がしますね。細かな断片があって、それらがぶつかり、そして、また出発して……。あのシーンは映画作りのミニ・メタファーのようなものでしょう。それに〈指揮者〉よりも〈DJ〉のほうがささやかな仕事だし、自分としては〈DJ〉と比べられるほうがいいですね(笑)」

そして、今回のテーマでもある家族という人間関係の魅力について訊ねると、デプレシャンいわく「うまくいかないところですね(笑)。でも、うまくいかないのが当たり前で、それは彼らが親とか兄弟である以前にただの個人であるからなんです」。キリストが生まれた日に迷える子羊たちが繰り広がる悲喜劇。その喧噪に満ちたシンフォニーから聞こえてくる〈音楽〉は、ホロ苦くて、繊細で、そして、美しい余韻を残す。

映画『クリスマス・ストーリー/Un Conte De Noël』

監督・脚本:アルノー・デプレシャン 音楽:グレゴワール・エッツェル
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/マチュー・アマルリック/アンヌ・コンシニ/メルヴィル・プポー/ジャン=ポール・ルシヨン/キアラ・マストロヤンニ/イポリット・ジラルド/ローラン・カペリュート/エマニュエル・ドゥヴォス
配給:ムヴィオラ(2008年 フランス 150分)
◎11/20(土)より、恵比寿ガーデンシネマほか全国順次ロードショー
http://a-christmas-story.jp/
©Jean-Claud Lother/Why Not Productions