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『イエジー・スコリモフスキ』『ビクトル・エリセ』『ヌーヴェル・ヴァーグの時代』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2010/11/18   21:00
更新
2010/11/18   21:09
ソース
intoxicate vol.88 (2010年10月10日発行)
テキスト
text:高野直人(秋葉原店)

来るべき未来へ向けての〈意志の力〉を感じさせるシリーズ

紀伊國屋映画叢書シリーズとして、第一弾『イエジー・スコリモフスキ』、第二弾『ビクトル・エリセ』、第三弾『ヌーヴェル・ヴァーグの時代』が刊行された。第二弾第三弾と同タイトルの本がすでに自宅の本棚にある、と言う人も多いかもしれない。実はその二冊は、昔エスクァイア・マガジン・ジャパンから出版された「e/mブックス・シリーズ」の〈新装版〉なのである。 ただし、これは単なる〈復刊〉ではない。

『ビクトル・エリセ』は03年のインタヴューを含め大幅に増補したもの、『ヌーヴェルヴァーグの時代』に至っては、ほとんど〈別物〉と言っていいくらい変更、改訂されている(中でも、ヌーヴェル・ヴァーグと同時代の世界の〈新しい映画〉の動きを総括した論考は必読)。前のシリーズで持っている人も要チェックであることは言っておかねばならない。

「e/mブックス・シリーズ」や今回のシリーズは全て編集者遠山純生によるものなのだが、「遠山純生の本」に共通する印象は、一読した後も幾度となく手に取ることが多い、と言うことだ。それは、まず資料性が高いからであり、それに加えて、刊行当時日本未公開だった作品でも躊躇なくスペースを割いているので、後年になって未公開作品が陽の目を見る機会に読み返すことが多いからからである。

『イエジー・スコリモフスキ』でも、解説や論考を中心に日本未公開作品にも等しくスペースを割いている。クローネンバーグやポランスキーの談話など含め、質、量ともに、スコリモフスキ好きには堪らない一冊であるのは間違いない。何より、まだ見ぬ未公開作を見ることへの欲望を激しく刺激される。今後、それらの大部分が何かしらの形で日本に紹介される日が来る、否、来なくてはならない、と、実感させ、来るべき未来へ向けて、欲望を組織化せよと働きかける。今回のシリーズも、そのような〈意志の力〉を感じてならない。

『イエジー・スコリモフスキ」
遠山純生 編
紀伊国屋書店 ISBN:9784314010689
『ビクトル・エリセ』
遠山純生 編
紀伊国屋書店 ISBN:9784314010719
『ヌーヴェル・ヴァーグの時代』
遠山純生 編 
紀伊国屋書店 ISBN:9784314010726