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ロック誕生!

連載
NEW OPUSコラム
公開
2010/12/17   15:38
更新
2010/12/17   15:39
ソース
bounce 327号 (2010年11月25日発行)
テキスト
文/北爪啓之

 

70年代前半に起こった日本のロック革命。その当事者たちが語る混沌の歴史とは?

 

 

2008年に公開された映画「ロック誕生 The Movement 70's」が、ディレクターズ・カット版としてDVD化。グループ・サウンズが終息した後、先鋭的なミュージシャンたちがそれぞれの〈日本のロック〉を模索しはじめた、混沌と創生の時代である70年代前半の音楽シーンを、約7割が未発表という発掘ライヴ映像と関係者たちのインタヴューで炙り出した、迫真のドキュメンタリーだ。

ライヴに関しては、単体での映像は恐らく初出となるはずのはっぴいえんどを筆頭に、近田春夫率いるハルヲフォンのファンキーなステージ、コズミックなプログレが異色のFar East Family Band、さらにフラワー・トラヴェリン・バンド、頭脳警察、クリエイション、四人囃子など、〈思い出のヒット・パレード〉的なTV番組では絶対に観ることができないであろう凄いメンツの貴重な映像が目白押しで、それらの逸品がまとまって収録されていることだけでも本作の価値は十分にある。

またインタヴューも実に興味深い。プロモーター的視点から新たなロック・ビジネスの可能性を探り、現状を打破しようと躍起になっていた内田裕也やミッキー・カーチス、当時のリスナーのロックに対する誤解や無理解を嘆く遠藤賢司や近田春夫、破天荒な武勇伝を披露する外道の加納秀人——混迷の時代をサヴァイヴし、いまも現役の面々が語る逸話は、当事者ゆえの洞察と説得力に溢れていて生々しい。日本のロックが市民権を得ていく過程に、こんなスリルとハッタリと冒険心に満ちた開拓時代があったことを再認識させられる、骨太な傑作。

 

▼文中で登場したアーティストを一部紹介。

左から、はっぴいえんどの71年作『風街ロマン』(URC/ポニーキャニオン)、近田春夫&ハルヲフォンの77年作『ハルヲフォン・レコード』(キング)、Far East Family Bandの73年作『地球空洞説』(コロムビア/Super Fuji)、フラワー・トラヴェリン・バンドの70年作『Anywhere』(ユニバーサル)