なんというアンバランス! Beautiful Imperfection!
衝撃のジャケット。どこかアフリカの、グリオの歌姫かなんかのアルバムでも間違えて手にとっちまったかな。しかし、勉強がよくできる女子、的なウェリントン眼鏡はアシャのトレードマークだ。ただし、そのレンズにはひびが入っている。なんというアンバランス(Beautiful Imperfection!)。で、このジャケットと呼応するようなモンダイの曲は3曲めに置かれている。
その《Be My Man》という曲はほとんど60年代ソウル歌謡だ。懐かしくも温もりのあるエレピの音色が全編に流れ、やわらかいトロンボーンのサウンドが包み込む。ほどよくおセンチで胸キュンなコード進行、思わず腰を浮かせてしまう軽快でラフなドラミング。♪My Mama used to tell me〜という歌い出しとカスタネットの音を聴けば、シュプリームスへの目配せは明らかだ。ネットで見られるこの曲のクリップでは、『ブルース・ブラザーズ』でのアレサ・フランクリンのダイナーをほうふつとさせる設定で、サブリナ・パンツ(!)をはいたアシャがヒップふりふりで踊りたおしている。
アシャといえば、08年のデビュー・アルバム、直後の来日公演でも、若干社会告発型の孤高のシンガーというイメージだった。ドレッド・ヘアを振り乱してアコギを掻き鳴らす姿に、筆者などはボブ・マーリィとアーニー・ディフランコを同時に思い出したものだ。が、2年半ぶりのこの新作2ndでの吹っ切れ具合はどうだ。もちろん、今作でもレゲエ調の曲は多く、アコギの刻みも全編で聞かれる。歌詞も相変わらずまっすぐ、ポジティヴだ。幼少期を過ごしたナイジェリアの、ヨルバ語の歌も、しっとりとしたバラードもまたある。だが、クールでハードでソリッド、だけではない、ゆるやかな遊びがここにはある。なにより、ダークで鄙びた声にもかかわらず、あと味の明るさ、軽みが聴く者の胸をあたためる。踊りまくるアシャをはやく見たいもんだが、再来日公演は来年秋って、そりゃちょっと先過ぎない?