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The Metropole Orchestra&Vince Mendoza『Fast City : A Tribute To Joe Zawinul』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/01/06   12:56
更新
2011/01/11   19:52
ソース
intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)
テキスト
text:高見一樹

ジム・ビアードやウェザー・リポートの元メンバーらも参加した新作

「世界最大規模のポップスとジャズのオーケストラ」、というのが今回紹介するメトロポール・オーケストラの売りだ。そんな陽気な売り文句に加え、1945年設立という歴史が加わって、このジャンルでは、もはや名門とよぶにふさわしい風格のオケだ。設立以来、オランダ国内では、ラジオ、テレビ、映画と、あらゆるメディアがこのオケに様々な仕事を発注してきた。現在の音楽監督/指揮者は、ヴィンス・メンドーサ。彼は2005年、現職に就いた、と公式ホームページにはある。このオーケストラの存在に世界が気づいたのは、むしろこのメンドーサの参加によるところが大きいのではないだろうか。

メンドーサは、グラミーを四回受賞した、40代後半の作編曲家、オーケストーターだ。本人名義のアルバムはまだ一枚という佳作家だが、アルバムにはピーター・アースキンをはじめとして匆々たるミュージシャンが参加している。しかし、私がこの名前を最初に目にして、記憶したのは、ECMからリリースされたピーター・アースキントリオのアルバムの諸作に収録された彼の数曲のオリジナルだった。

メンドーサとメトロポール・オケのコンビでは、ジム・ビアード、ジョン・スコフィールド、イヴァン・リンスをゲストに迎えたアルバムがすでに発売されていて、イヴァンとのアルバムでは、ラテングラミーを受賞している。たしか、ジム・ビアードとの作品は、本誌レギュラーコラム(冨田ラボのnudgenudge)でも大きく取り上げられていた。今回、これまでのアーティストとのコラボ路線から外れて、ジョー・ザヴィヌル作品集という形、ひとりの作家の作品に、オケが取り組んだ。

ジョー・ザビヌルは、チック・コリア、ハービー・ハンコックとともにマイルス・デイヴィスグループの卒業生のひとりで、70年代にウエイン・ショーターと組織したグループ、ウエザー・リポートで注目を集めた。本作で取り上げられた《In a Silent Way》というバラードは、ザビヌル出世作であるばかりか、ジャズ史に残る名曲だ。メンドーサは、ザビヌルらしい気配を、オーケストラのグラマラスな響きに見事に昇華させている。ちなみにこの曲は、ザビヌル本人によれば、Silent Nightに書かれた、という。