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SAVOY JAZZ名盤選1100

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/01/11   12:01
更新
2011/01/11   12:20
ソース
intoxicate vol.89 (2010年12月20日発行)
テキスト
text:馬場雅之(タワーレコード本社)

バップといえばサヴォイ! 面白すぎて仕事サヴォっちゃダメよ

ジャズ・ザ・ベストなどジャズの国内盤の廉価シリーズが人気だ。このサヴォイのシリーズもこの流れをくむもので、昨年12月にその第一弾としてチャーリー・パーカーをはじめとする全20タイトルが発売された。今回はその第二弾でカーティス・フラーの『ブルースエット』、アート・ペッパーの『サーフ・ライド』といった傑作が含まれた30タイトルのリリースになり、第一弾とあわせ総タイトル数50作が1100円盤で登場したことになる。

サヴォイ・レーベルの歴史をざっと振り返ってみよう。美術愛好家だったハーマン・ルビンスキーが42年に創設、録音自体は31年頃からおこなっていたようで、最初はフレッチャー・ヘンダーソン、ジャック・ティーガーデンなどスイング、中間派系のレコーディングが多かった。やがてテディ・リーグをプロデューサーに迎え、ビバップを中心としたレコーディングにシフトし、チャーリー・パーカー、ディジー・ガレスピーなどのセッションをどんどん吹き込んでいった。その傍らでR&Bのレコードの好セールスに支えられていたともいわれている。54年になるとサヴォイの名プロデューサーとして知られるオジー・カデナが迎えられ、レーべルはここから大躍進を遂げ、傑作を発表してゆく。カデナはルビンスキーが経営していたレコード店の店員だったが、50年代半ば以降の名作はほぼカデナが手がけてゆくようになった。このカデナ時代がサヴォイ・レーベルの黄金期といってもいいだろう。

ミルト・ジャクソンの『オパス・デ・ジャズ』、ケニー・クラークの『ボヘミア・アフター・ダーク』といったアルバムはこうした時期に生まれた。またJJ・ジョンソンとカイ・ウィンディングといった2トロンボーンによるJ&Kはカデナの発案で誕生したコンビであったり、この他キャノンボール・アダレイ、リー・モーガン、ドナルド・バード、ハンク・モブレー、ハンク・ジョーンズなどの諸作をリリースした功績は大きい。59年にカデナが去った後、レーベル自体は60年代以降はそれほど振るわなくなり、いわゆるそれまでのモダン・ジャズ系のアルバムとは違ったアルバム制作にも手を出すことになる。サン・ラ、ジミー・スコットといったユニークなアーティストのレコーディングを行ってはいるものの、ゴスペル系のレコードを作ることが多くなり、ジャズのアルバムはやがて減っていった。74年には創設者のハーマン・ルビンスキーが死去し、レーベルはその後アリスタ等いろいろなレーベルへと権利は転々とするが、92年に日本のコロムビアがカタログを引き継いだ形になっている。

このようにサヴォイは長年の歴史を持つ古参ジャズ・レーベルだが、そのビバップからハードバップ期の名盤を中心にリリースするサヴォイ・ジャズ名盤選1100はトップ・マスタリング・エンジニアの保坂弘幸氏がリマスタリングした音源を使用しており、50年代のジャズのサウンドが見事に再現されている。

 

話を今回の第二弾に戻すと、そのラインナップは先述のカーティス・フラー、アート・ペッパーの2大傑作を核に、50年代~60年のレーベルの中でも人気の高い、いわばカデナが手がけた諸作が揃っているのが特徴だ。CMでも使われた名曲《ファイヴ・スポット・アフター・ダーク》が収録されているカーティス・フラーの『ブルースエット』は今やサヴォイ・レーベルの象徴ともいえるもので、数年前には村上春樹の小説『アフター・ダーク』の中にも登場するなど、もっともよく知られているタイトルだ。また初期のマイルス・デイヴィス、ハードバップ期のジョン・コルトレーンの音源などもあり、この他ブルーノートでのレコーディング・アーティストのアルバムも多いが、ブルーノートがもつ独特のアーシーさ、土着感より、ややリラックスした正統派のセッションを捉えている印象が強いレーベルでもある。

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