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片山杜秀『ゴジラと日の丸 片山杜秀の「ヤブを睨む」コラム大全』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/04/10   16:49
更新
2011/04/10   17:40
ソース
intoxicate vol.90 (2011年2月20日発行)
テキスト
text : 小沼純一(音楽・文芸批評家/早稲田大学教授)

週刊『SPA!』の連載(1991-2002)がまとめて読める!

あアツい。上下二段、520ページをこえる。

片山杜秀がはじめは匿名、その後署名をいれ「ヤブを睨む」とのタイトルで週刊『SPA!』に連載していた記事をまとめたのが本書。1991年10月から、2002年9月まで、じつに11年におよぶ。

アルテス・パブリッシングから刊行された『音盤考現学』『音盤博物誌』『クラシック迷宮図書館』も、近年つぎつぎとだされる片山杜秀の本は、本書同様、連載をまとめたものが多い。ためられていたのだろうが、おそらくは書き下ろしをするより、何かにふれ、あたまにうかんだものをアウトプットするのに忙しく、本以上に、雑誌やネットといった連載という形式はこの人物にむいているのかもしれない。

内容は多岐にわたる。題名にあるように〈ゴジラ〉と〈日の丸〉の頻度は高い。つまり映画と政治、政治・社会、音楽とそのときどきのトピックをさかなに〈斬る〉。その気になればテーマやタグごとに分類することもできただろう。インデックスをつけても良かったかもしれない。だが、そんなことはせず、ひたすら時系列にならべる。そのおかげで、たとえばいまから10年前、2001年2月に発行された号4回は、こんなふうだ──真の日本精神とは、乳房を見ても興奮しないこと!?」「歌舞伎のエログロな活力は九代目宗十郎と共に死んだ」「新大久保の事件は、やはり犬死に。感動するのはマゾだ」「クセナキス追悼」。

もちろん媒体のせいもあろう。そして片山杜秀という書き手の何かとシンクロするものがあって、こうしたテーマ、方向、そして何よりも辛辣で断定的な物言いが生まれてくる。だから、ほんとうは雑誌の〈なか〉でこそ読まれるべきで、こうしてならべてみるとその毒とアブナさは、妙なニオイを発さずにはいない。それをおもしろがるか、敬遠するか、嫌悪するか、(あるいは無視するか)は、単行本でこそよりはっきりするのだろう。あなたは、じゃあ、どうか。一種の試金石として。