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映画『FLOWERS -フラワーズ-』

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公開
2011/04/10   18:04
更新
2011/04/10   18:21
ソース
intoxicate vol.90 (2011年2月20日発行)
テキスト
text:吉川明利(タワーレコード本社)

蒼井優、竹内結子、仲間由紀恵、田中麗奈、広末涼子、鈴木京香6大女優、夢の共演!と銘打っているものの、それぞれの役の時代設定が異なっているため、全員が同一画面での共演というわけではない。しかしこの手法、ハリウッドではすでに取り入れられており、「ラブ・アクチュアリー」を代表に「バレンタインデー」や「そんな彼なら捨てちゃえば」などがある。多くの登場人物を配し、スター俳優達が顔見世興行的に出演するのだが、実はこのパターン、忙しいハリウッド・スターに気に入られていると聞く。要するに高額なギャラだけど、拘束期間3ヶ月の撮影より、ギャラが安くとも3日間で撮影が済む作品の方が楽でよいというわけだ。撮影期間はともかくとして、この映画はその手法を見事に活用している(実は)画期的な日本映画なのである。

時代設定は昭和初期から、現代まで。現代のパートを鈴木京香と広末涼子が担当し、同一画面で共演している。昭和30年代~40年代で田中麗奈と竹内結子が同じく共演、仲間由紀恵は3姉妹の役だが、50年代に単独出演。その全員のご先祖様となる蒼井優が、昭和11年の場面で出演という、いささか複雑な構成になっている。さらに映像のタッチが、確信犯的に時代を現すトーンとなっているのが意外に面白い。すなわち昭和11年のキャメラワークは小津安二郎的な畳に座った人間目線でのモノクロ画面。昭和30年代からは、東宝サラリーマン喜劇的なスタジオ撮影独特のトーンを醸し出し、50年代部分はロケーション重視の東宝青春映画的な画面タッチとなっている。往年の日本映画を見ているようなこの再現は、製作担当のROBOTならではの技と言えるだろう。

作品のキーワードは『昭和という時代を生き抜いてきた女性たち』。この昭和というキーワード、また最近特に取り上げられている感があり、平山秀幸監督の自伝的要素たっぷりの「信さん・炭坑町のセレナーデ」が公開されたり、缶コーヒーのCMで坂本九の「上を向いて歩こう」が流れたり、そして究極の昭和の男たちの物語「あしたのジョー」が製作されるといった按配だ。

6人の中で、最も時代と格闘している役柄を演じているのは、田中麗奈だろう。昭和30年代、まだまだ男社会にあって、雑誌編集者として働いている女性。交際相手(河本準一好演!)から結婚を申し込まれても、仕事を止めることが条件と知り憤慨しながら担当小説家(さすがの長門裕之!)に相談したりして悩む姿は、微笑ましくもこの時代の働く女性共通の問題を描写して見せてくれた。エンドクレジットで流れる主題歌はドリカムの「ねぇ」だが、オリビア・ニュートン=ジョンの「そよかぜの誘惑」を挿入歌としたラストシーンは“家族の絆と人の命”を爽やかに表現し、鮮やかであった。

映画『Flowers フラワーズ』

企画・製作総指揮:大貫卓也 監督:小泉徳宏
音楽:朝川朋之
主題歌:「ねぇ」DREAMS COME TRUE
出演:蒼井優 竹内結子 田中麗奈
仲間由紀恵 鈴木京香 広末涼子
©2010「FLOWERS」製作委員会