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BEARDYMAN

連載
360°
公開
2011/04/14   15:28
更新
2011/04/14   15:28
ソース
bounce 329号 (2011年2月25日発行)
テキスト
構成/轟ひろみ

 

UKきってのヒューマン・ビートボクサー……この男、本当に口が立つぜ!!

 

この人、誰?と思ったら、〈BEARDYMAN〉と検索すればすぐにわかるはず。彼はノース・ロンドン出身のヒューマン・ビートボクサー。ヒューマン・ビートボックスといえば、ドラムやベース、スクラッチのブレイクビーツ音を肉声で発する手法としてお馴染みでしょう。元ルーツのラーゼルとスクラッチ、キラ・ケラ、あるいは日本のAFRAや太華らの口達者が高い支持を得る一方、ポップ・フィールドにもブレイク・ルイスや中丸雄一(KAT-TUN)がいますね。

ただ、このバーディマンは自身の口から発したビートをその場でパッドに取り込んで連奏するなど、ビートボックスを使ってもう一段階先のパフォーマンスを繰 り広げてきた達人であります。そして、彼が完成させた初のアルバム『I Done A Album』は、ドラムンベースやダブステップを中心にしたキャッチーなビート・ミュージック集で、昔から親しんでいた楽器演奏も随所に交えた作品に 仕上がってきました。その秘密を訊いてみたところ……この男、とにかくよく喋る!

 

――このアルバムはすべてヒューマン・ビートボックスで作ったとは思えないほどの出来映えですが、そうなると逆に視覚効果がないぶん、〈ビートボクサーのアルバム〉だとわからなくなる恐れはなかったですか?

「この『I Done A Album』は、〈アルバムを作りたいビートボクサー〉のアルバムじゃなくて、〈どういうわけかビートボクサーになることにしたソングライター〉のアルバムなんだ。だから、ソングライターとビートボクサーが混ざってるんだよ。バランスを取るのは難しかったけどね。まず、俺は子供の頃からずっとアルバムを作りたいと思っていた。昔から音楽を作ってきたし、自分のクリエイティヴさや姿勢を表現して、人々に見せたいとずっと思ってたんだ。ライヴってはその才能を見せる手段のひとつにすぎない。普段の大部分はライヴ・プロダクションだし、ライヴ・ダンス・ミュージックを作ってるけど、一方でそうじゃない音楽も作ってるんだぜ。だから、自分にとってアルバムを作るというのは自然の流れだったし、アイデアはもともとたくさんあったんだよ。もちろん、ビートボックスをやることによって得たアイデアもあるけどな。だから、ちょっと変わったアルバムだし、人が期待しないものが入ってるアルバムだと思う。実際にどの音がビートボックスかはハッキリ言ってわからないだろうね。

ビートボックスのファンや批評家たちは、〈このアルバムがストレートなビートボックスのショウケースじゃない〉ってことに重点を置いて批評すると思うんだ。でも、それが重要視されるなら、そもそもビートボックスをレコーディングする意味は何だ?って俺は訊き返したいね。俺は、そのアイデアをぶち壊したんだ。そういうアルバムにすることだってもちろん出来たけど、今回はやってはいけないこと/やらなければいけないことみたいな決まりを作って、アイデアを制限したくなかったんだ。だから、コンセプトは持たせなかったし、特定のルールはテーマは定めなかった。当初の目標は……達成できたと思う。わからないけど(笑)やりたいことはやったし、何度もトラックを聴いて、納得いくまでできる限りのことはやったから。何度聴いてもフレッシュだったしね! でも、いまはもうセカンド・アルバムのことを考えてるから、次に達成しないといけないことで頭がいっぱいなんだ! 俺はいつも次のことを考える! 次回はもっと……それはまた出来てからのお楽しみだな。あまり人を驚かせるのは好きじゃないんだけど、聴いたらちょっとは驚くと思うよ(笑)」

 

――どういう音楽を聴いてきて、こういう音楽性に辿り着いたのでしょう?

「子供の頃は、ギターやベースの音楽、クラシックも聴いてたな。あと、親のレコード・コレクションだったビートルズにめちゃくちゃハマってた! ティーンになると、インディー・ダンスとかブリット・ポップ……はそうでもないかも。でもパルプとかブラーとか、オアシスとかを聴いてたね。そこからいろいろ聴くようになって、初めてドラムンベースを聴いた時は衝撃だったよ! あんなの、生きてきて聴いたことがなかった。音楽的に本当に素晴らしいと思ったんだ。ドラムンベースにはヒップホップやレゲエも、何から何まで入ってるからおもしろいよね。例えばドラムンベースでも、ペンデュラムはまるでニュー・メタルだけど、ジャズっぽい時もあって、そこではすべての音楽がひとつになってると思うんだ。その部分は俺のアルバムにも反映されてるよ。エモーションとかも含めて、いろいろなエッセンスを採り入れてるんだ」

 

――ケミスツやグルーヴ・アルマダ、ハーバライザー、リアーナの作品でもあなたのパフォーマンスを聴くことができました。最初にレコーディングした作品は何ですか?

「リアーナ!? リアーナと会ったことは一度だってないぜ(笑)。これからも仕事をすることがあるとは思えないけど(笑)。最初にレコーディングした曲は……覚えてないな(笑)。15歳くらいの時からコンピューターで作りはじめた曲はカウントしないだろ(笑)? 実は2006年ぐらいに一度EPを出してたんだけど、自分が心から納得できる方向性ではなかったから、配信も削除してもらったんだ。今回のように自分が心から納得できるものではなかった」

 

▼バーディマンの参加作品を紹介。

左から、リアーナの2009年作『Rated R』(SRP/Def Jam)、ケミスツの2009年作『Join The Q』(Ninja Tune)、グルーヴ・アルマダの2007年作『Soundboy Rock』(Jive)、クラフティ・カッツの2009年作『Against The Grain』(Against The Grain)

 

――いろいろオファーはあったと思いますが、ロブ・ダ・バンクが主宰するサンデイ・ベストとの契約を選んだ理由は?

「必要としていたフリーダムを与えてくれたし、UKのなかでも前進しているレーベルのひとつだからさ。インディペンデントだし、心から音楽が好きな素晴らしい人々のチームによって作られてるんだ。俺は、テクノだけ、ドラムンベースだけ、ヒップホップだけっていうアルバムもやれるけど、こういう個性的なアルバムを結果的に作れたのは皆のおかげ。トム・ミドルトン(ジェダイ・ナイツ)といっしょにやってみたらどうかと提案してくれたのもロブなんだ。トムは音楽の魔法使いそのもので、マスターになれると思うよ。音楽の美しさを知ってるんだ」

 

▼関連盤を紹介。

左から、ロブ・ダ・バンクのミックスCD『Fabric 24: Rob Da Bank』(Fabric)、トム・ミドルトンの2007年作『Lifetracks』(Big Chill)

 

――レコーディング作品を残しているビートボクサーは何人かいますが、そのなかであなたしか持っていないもの、あなたの作品独自の個性は何だと考えていますか?

「わからないな(笑)。あえて言うなら、クリアなビートボックスを作品にしているビートボクサーはたくさんいるけど、俺がやってるのは、自分が得意なことのコンビネーション。歌も唄えばビートも刻むし、コメディーもやるし、テクノロジーも使うし……そういったことの組み合わせなんだ。俺だけじゃなくて、皆それぞれが特徴を持ってると思うけど、俺に関してはアングルが違うんじゃないかな。俺はとにかく、やりたいことはすべてやりたいんだ。ビートボックスだけが大切ってわけじゃなくてね。俺にとってのビートボックスは、そのやりたいことを繋ぎ合わせる手段、クリエイティヴ・ツールなんだ」

 

▼著名なビートボクサーの作品を紹介。

左から、AFRA & INCREDIBLE BEATBOX BANDの2008年作『WORLD CLASS』(rhythm zone)、スクラッチの2009年作『Loss 4 Wordz』(Gold Dust Media/!K7)、DOKAKAの2008年作『HUMAN INTERFACE』(Pヴァイン)

 

――オールタイムでお気に入りのアーティスト/アルバム/楽曲をそれぞれ教えてください。

「答えられないな。たくさんありすぎて選ぶのは無理だね(苦笑)。じゃあ、いまの気分でアルバム3枚でもいい?」

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