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FINLAND FEST 2011

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EXTRA-PICK UP
公開
2011/05/06   20:08
更新
2011/05/06   20:34
ソース
intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)
テキスト
text:松山晋也

フィンランドのミュージック・シーンを世界に向け発信する「フィンランド・フェスト・イン・東京 2011」が今年も5月28日から都内各所で開催されます。フィンランドで注目されている旬な話題のアーティストのライヴをお楽しみください!

フィンランドから個性溢れる2バンドが来日!

ムーミンとサウナとカレワラとシベリウス──30年前、フィンランドに対する日本人のイメージは、おそらく、ほぼそれらに尽きると言ってよかっただろう。つまり、欧州辺境の牧歌的な小国、と。しかし90年代以降この国は、Linuxカーネルやノキアに象徴されるハイテク技術/産業で俄然注目を集め、近年は、世界トップ級の児童学力と生活水準、政治のクリーンさなどもあって、憧憬の眼差しで眺められている。その総合的イメージをひとことで言えば〈個性的な実力派〉といったところか。

そして、その新しいイメージは、音楽の世界にもあてはまる。電子音楽にヘヴィ・メタルにジャズ、そして伝統音楽と様々な分野でフィンランド勢の活躍は目覚しい。日本でも近年、フィンランドのレーベルが大挙して参加する見本市が毎年開かれ、着実に取引量とリスナーを増やしてきた。今年も5月下旬に、いろんなジャルンから選りすぐられたのミュージシャンのライヴ・イヴェント〈FINLAND FEST 2011〉が行われる。その参加ミュージシャンの中から、ここではエスノ系の二つだけをピックアップしよう。同国を名実共に代表するトラッド・フォーク・バンドのヴァルティナと、妄想エスノ・プログレ・バンド、アラマーイルマン・ヴァサラットである。

なんと11年ぶりの来日となるヴァルティナこそは、90年代の北欧トラッド・フォーク・シーンの活況を象徴/牽引してきた人気バンドである。僕自身、フィンランドの伝統音楽シーンに注目し始めたきっかけは、91年に出た彼らの3rdアルバム『Oi Dai』を聴いたことだった。83年、同国東部カレリア地方のラーキラでサリ&マリ・カーシネン姉妹を中心に結成されたヴァルティナは、サリ他主要メンバーがヘルシンキのシベリウス・アカデミーの民俗音楽学科に入学後にロック系新メンバーを加えて再編。以後、身上であるシンプルな村祭り的ノリに、都会的スピードと切れ、ロック的ダイナミズムとポップさを絶妙に加味して、急速に人気を高めていった。『Oi Dai』とそこからのシングル・ヒット「マリラウル」はその第一歩である。

92年には欧州各地のフェスに招聘され、4作目『Seleniko』を発表。これは欧州ワールド・ミュージック・ラジオ・チャートで3ヶ月間も首位を独走し、アメリカでも発売されるなど、活躍の舞台は世界へと広がっていった。94年には5作目『Aitara』を発表。収録曲の大半がオリジナル曲になっているが、民謡が本質的に持つ生々しさ、猥雑さはポップな形で一段と強化されている。心地よく弾むビートと、フロントの女性陣のマシンガンの如きヴォーカル/コーラスのパワーはほとんど無敵だ。全米ツアーも大成功。ここに至り、ヴァルティナはフィンランド、いや北欧を代表する新世代トラッド・フォーク・バンドとして、世界中に名を轟かせるようになったのである。

96年には6作目『Kokko』を全世界で発表し、翌年には初来日公演も(これを含めて計3回来日)。結成時からバンドを引っ張ってきたサリは子育てとソロ活動優先のために、このアルバムを最後に脱退したが、以後、随時メンバーを入れ替えながらも、妹のマリを中心に安定した活動を続けている。近年の作品は、日本盤も出た『Iki』(03年)、リアルワールド制作の『Miero』(06年)、そして結成25周年記念ベスト盤『25』(07年)がある。性の問題など、フィンランド現代女性の日常のリアルな心情表現にこだわる姿勢も健在だ。

一方、フィンランド語で「地下社会のハンマー」を意味するアラマーイルマン・ヴァサラットは、時にエキセントリックにも見えるフィンランド人ならではの個性──寡黙でシャイだけど同時に大胆かつアグレッシヴ──が凝縮されたような6人組だ。結成は97年。リーダーのサックス奏者ヤルノ・サルクラ、通称スタクラは、90年代にはホイリー・コーンというチェンバー・プログレ・バンドのベーシストだったが、突然、それまで全く演奏経験のなかったサックスを手にとり、このバンドを結成。2000年のデビュー作『Vasaraasia』以下、一昨年に日本盤も出た『Huuro Kolkko(フーロ・コルッコ〜消えた冒険家)』まで計5枚のアルバムを発表。今回の来日を記念して、日本だけのベスト盤『ソングス・フロム・ヴァサラーシア』も出たばかりだ。

彼らの音楽は、クレツマーをはじめ、北欧系や東欧/バルカン系など各種伝統音楽、ヘヴィ・メタル、プログレ、クラシック、ジャズなど様々な要素を貪欲に取り込んだ、いわゆるミクスチュアもので、ヨーロッパでは、その複雑怪奇かつシアトリカルなサウンドは「フランク・ザッパとマイク・パットンが一緒にセルビアでレコーディングしたらこんな音楽になるだろう」などと紹介されたりもしている。そして、彼らの売りであるダーク&ゴシックな感触を決定づけている最大のポイントは、重低音の異常なまでの偏重だ。これはブラス2、チェロ2、キーボード、ドラムという特殊な楽器編成の賜物だが、最近は、テューバックスなる新兵器(コントラバス・サックス)まで導入し、一段と低音の強度を増している。

自らの音を「ヴァサラーシアという国で生まれた架空のワールド・ミュージック」と説明するユーモア感覚とつかみどころのなさ、それもまたフィンランド魂、か。

FINLAND FEST2011

WORLD MUSIC SHOW CASE
5/28(sat) 5/29(sun) 17:00open 18:00start
出演:Värttinä / Alamaailman Vasarat
会場:Shibuya O-West
http://www.mplant.com

METAL ATTACK
5/28(sat)16:00open 17:00start
出演:KORPIKLAANI /LAPKO/myGRAIN/MOONSORROW
Special guest : OUTRAGE(from JAPAN)
会場:恵比寿リキッドルーム