愛されて続けて50年。あの懐かしい曲がDVDとCDでよみがえる!
1961年4月の放送開始以来、これまでにTVとラジオで1,300曲以上を世に送り出してきた〈みんなのうた〉。50年を迎えた今年は、新春にスペシャル番組が放送され、番組HPが大きくリニューアル(※楽曲データ・ベースも充実)されるなど、秘かに盛り上がりをみせていたが、ついに放送時と同じ映像やオリジナル歌唱が楽しめる新企画のディスクが発売された。特に各時代から選りすぐった全168曲を年代別に12枚のDVDに収めたBOXはintoxicate世代を狂わせる恐るべき〈大人買い必至〉商品である。以下にお薦め曲を思い入れたっぷりに紹介しよう!
第1~3集の収録曲は現在41歳の筆者にとっては全て生まれる以前に初回放送されたものばかりだが、馴染み曲もたくさんある。つまりは〈みんなのうた〉の優れたアレンジや魅力的な映像によって大衆に浸透し、時代を超えて聴き/歌い継がれた名曲の何と多いことか。例えば実験的なアート・アニメの先駆者、久里洋二による絵がキュート過ぎる《五匹のこぶたとチャールストン》と《ちびっこカウボーイ》(※弘田三枝子のパンチの効いた歌声も素敵)は懐かしくて思わず一緒に歌い出したくなった2曲。和田誠の絵と中尾ミエの歌唱…イエ・イエ風のアレンジが時代を感じさせる《ママごめんなさい》もまるで幼馴染みと再会したような嬉しさ。また、サトウハチロー(詞)&中田喜直(曲)の黄金コンビによる《わらいかわせみに話すなよ》のような楽しい〈遊び心溢れ系〉の楽曲と、中山千夏のひたむきな歌唱が心を打つ《もえあがれ雪たち》のような〈涙溢れる系〉の楽曲がバランスよく散りばめられているのも、この番組が長年愛され続けている理由なのだと改めて気づかされた。
五匹のこぶたとチャールストン(左)ちびっこカウボーイ(右)両方とも ©NHK/久保洋二
筆者が小学校に上がるまでの時期と重なる第4~6集をチェックすると、放送を観た記憶が残っている楽曲との出会いもあったが、大庭照子の歌うジルベール・ベコー作のシャンソン《詩人が死んだとき》が〈みんなのうた〉だったのは知らなかった。彼女はビゼーの《美しいパースの娘》のメロディに日本語詞を付けた《小さな木の実》も歌っており、これなどもクラシカル・クロスオーヴァーのはしりだと考えると非常に興味深い。この時代の〈遊び心溢れ系〉の代表格は「おでましおでましひげよ~」のフレーズとペギー葉山の小唄風の歌い回しが強烈に印象的な《ひげなしゴゲジャバル》とクニ河内の自作曲《ドラキュラのうた》だろうか。〈涙溢れる系〉なら本田路津子の《子犬のプルー》かも。そして研ナオコの《アスタ・ルエゴ ~さよなら月の猫~》と尾藤イサオの《赤鬼と青鬼のタンゴ》。この2曲は当時TVの前に座って放送されるのを待ちわびていた程のお気に入りだった。
ヒロミ ©NHK/田中ケイコ メトロポリタン美術館 ©NHK/岡本忠成
第7~9集も思い出たっぷり。〈日立の樹〉のCMで知られる国民的作詞家、伊藤アキラが手がけた《ヒロミ》を歌っているのはドラマ〈熱中時代〉の《ぼくの先生はフィーバー》で一世を風靡した原田潤だったり。また財津和夫の《切手のないおくりもの》は有名だが、この時代は竹内まりやの《アップル パップル プリンセス》や大貫妙子の《メトロポリタン美術館》、谷山浩子の《恋するニワトリ》ら、人気シンガーの隠れた名曲がいっぱい。
恋するニワトリ ©NHK/若井丈児 一円玉の旅がらす ©NHK/西村緋祿司
第10~12集ともなると《一円玉の旅がらす》や《WAになっておどろう》のような記憶に新しいヒット曲が顔を出すが、映像的にお薦めしたいのは鬼才、古川タクが手がけたパラパラ漫画風の職人芸《以心伝心しよう》だ。
なお、CD編の方はレコード会社5社共同で200曲を40曲ずつ5タイトルで同時リリースしたもの。こちらに関してはDVDに収録されていない2003年以降の新しい楽曲も網羅されている。実はこれまでに発売されたCDでは、特に時代の古い楽曲はニュー・ヴァージョンでの新録ものが多かったが、今回は全曲オリジナル歌手にこだわって収録されているのが素晴らしい。intoxicate世代ならポイントカードを握りしめて、今すぐお店に!