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ジャズ・アット・ザ・コンセルトヘボウ

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/05/27   13:00
更新
2011/05/27   19:25
ソース
intoxicate vol.91 (2011年4月20日発行)
テキスト
text:村井康司

1955年〜58年にアムステルダムで開催されたライヴ音源を復刻開始

アムステルダムのコンセルトヘボウといえば、世界に冠たるクラシックの殿堂。50年代にオランダを訪れたアメリカのジャズメンたちが、このホールで演奏したライヴの記録が、今回4タイトル発売された「ジャズ・アット・ザ・コンセルトヘボウ」シリーズだ。

録音年代順に紹介していくと、まずはチェット・ベイカーの『コンプリート・コンサート・イン・オランダ1955』。チェットは名作『チェット・ベイカー・シングス』の時期だけに、端正なトランペットも中性的な歌も実にすばらしい。

この直後にパリで客死してしまうディック・トゥワーディクの、ごりごりと弾きまくるピアノも聴きものだ。翌56年4月に録音されたジェリー・マリガンの『セクステット・ライヴ・イン・アムステルダム1956』は、音楽的な充実度という点ではこの4枚中随一かも。

トランペット、ヴァルブ・トロンボーン、テナー・サックス、バリトン・サックスの4管編成で、マリガンによるアレンジが実にいいのだ。ジョークを飛ばしながら進行するマリガンのお茶目ぶりが楽しい。J.J.ジョンソンの『クインテット・ライヴ・イン・アムステルダム1957』も、ジャズ史的にはレアな記録だ。

圧倒的テクニックのJ.J.がすばらしいのはもちろんだが、トミー・フラナガン、ウィルバー・リトル、エルヴィン・ジョーンズのリズム隊が、2日前にスウェーデンで録音した《リラクシン・アット・カマリロ》(『オーヴァーシーズ』!)を演奏しているのだから。

今回唯一のヴォーカルものが、サラ・ヴォーン『ライヴ・イン・アムステルダム1958』だ。完璧な技術と温かみのあるエモーションがいいバランスで同居したパフォーマンス。

エラ・フィッツジェラルド版を意識した《ハウ・ハイ・ザ・ムーン》がハイライトだ。このシリーズ、この後もマイルス、スタン・ゲッツ、オスカー・ピーターソンなどがリリース予定とのこと。

わくわくして待ちましょう。