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salyu×salyu

それで、『s(o)un(d)beams』の中身は……?

連載
360°
公開
2011/05/30   17:16
更新
2011/05/30   17:16
ソース
bounce 330号 (2011年3月25日発行)
テキスト
文/澤田大輔

 

Salyuの歌を楽器として捉え、自由に響かせる——そんなコンセプトを掲げたプロジェクト、salyu×salyu。その第1弾『s(o)un(d)beams』をプロデュースするのはコーネリアス=小山田圭吾である。氏が他者のアルバムを丸ごと手掛けるのは相当久々ということもあり、どんなアプローチを取るのかにまず聴き手の興味は向けられるだろうが、ここで展開されているサウンドはまぎれもなくコーネリアス自身のスタイルを受け継いだものだ。楽器音も歌もパーツ単位に分解し、それらを立体的に組み合わせることで、ダイナミックにして時にファンクすら感じさせる音世界を構築している。特にヴォーカルのパーツ化はコーネリアス作品よりも徹底されており、ドスの効いた低音から少女のような囁きまで、変幻自在のSalyuヴォイスがアクロバティックに舞う様に圧倒されるだろう。

そんな解体作業は歌詞の面でも突き詰められており、単語レヴェルに切り刻まれた言葉がサウンド同様に四散する。しかし、元ゆらゆら帝国の坂本慎太郎が作詞した“奴隷”などを注意深く聴くと、一見バラバラな言葉はギリギリのところで繋がり、物語や情感を浮かび上がらせていることがわかるはずだ。非情に分解された断片がそれでも意味を持ち、エモーションを伝える。その特異な試みは、“心”の歌詞を提供したいとうせいこうが在籍する□□□の最新作『CD』ともシンクロしているように思えるのだ。

 

▼『s(o)un(d)beams』に参加したアーティストの作品を紹介。

左から、2010年にリイシューされたコーネリアスの97年作『FANTASMA』(トラットリア/ワーナー)、ゆらゆら帝国の2007年作『空洞です』(ソニー)、□□□の2011年作『CD』(commmons)

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