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小澤征爾指揮 サイトウ・キネン・オーケストラ 20th Anniversary BOX

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2011/07/05   16:11
更新
2011/07/05   16:21
ソース
intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)
テキスト
text : 雨海秀和(渋谷店)

20年の記録が、DVDとブルーレイでボックス発売!

2010年小澤の病気復帰のチャイコフスキー《弦楽セレナード》第1楽章の壮絶演奏も収録されました。サイトウ・キネン・フェスティバル松本が今年で20回目を迎えます。この機会に1992年から2010年の演奏会の映像が発売されます。小澤の指揮、オーケストラメンバーの変遷も興味深いです。両者とも年々のレベルに安住していないのは明らかです。また、多くの演奏はCD発売がされていますが、その素晴らしさが全く伝わらないものが多く、DVDとブルーレイに期待したいところです。

第1回演奏会のブラームス『交響曲第1番』とチャイコフスキーの《弦楽セレナード》他は必ず成功させるとの意気がひしひしと伝わってくる熱演です。ブラームスでは長らくオーケストラの顔でボストン交響楽団のティンパニストだったファースの活躍(第1楽章冒頭や第4楽章の終わりのコラールのティンパニ追加部分)が目を引きます。セレナードは分厚い弦楽合奏の響きが印象的でした。モーツァルトのディヴェルティメントは初期のこのオーケストラのテーマ曲ともいうべき作品で愛情のこもった演奏です。小澤のこれらの作品への愛着は2010年に病気から復帰した際、この2曲を指揮したことでも明らかです。ベートーヴェンでは、交響曲第7番は小澤のなりふり構わぬ乱舞がオーケストラに伝わり、火だるまのように突き進む見事な演奏でした。ベルリン・フィルの名手コッホのオーボエ、ライスターのクラリネットが実現し、フルートの工藤重典も加わった木管セクションの充実ぶりが光ります。

7番以外の作品でもライスター、コントラバスのツェペリッツが参加しています。小澤の躍動感が光るベートーヴェンが楽しめます。ブルックナーはアダージョの美しさとクライマックスの迫力に心打たれます。ホルンのラデク・バボラークの美しい音色が随所に聴かれます。小澤の音楽も深さと奥行きが出て、すわりが良くなっています。ラヴェルや武満では得意曲での小澤の底力が伝わる名演です。