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She's Strong, She's Beautiful

連載
NEW OPUSコラム
公開
2011/07/20   18:00
ソース
bounce 334号 (2011年7月25日発行)
テキスト
文/宮内 健

 

妊娠~出産を経験し、女性としても表現者としても大きな転換期を迎えたPUSHIM。さらに力強いディーヴァぶりを見せつける一方、かつてなくパーソナルな心情も露わにした新作は、文字通りのマイルストーンだ!

 

PUSHIM_A

 

赤ん坊の安堵に満ちた笑い声と、柔らかく包むように優しい母親の歌声──アルバムの中盤、インタールードとして収録されたかまやつひろし“やつらの足音のバラード”のカヴァーは、PUSHIMが自分の息子をお風呂に入れながらアカペラで歌ったのを、その場で録音したものだという。

「ちょっと恥ずかしいぐらいに、パーソナルなアルバムになった」と本人も語っている通り、昨年10月に男児を出産して生活スタイルが変わった結果、彼女のなかで意識や視点の変化が生まれたということは、2年半ぶりのニュー・アルバムとなる『MILESTONE』の随所から窺える。

例えば、〈暑い夏が去った後に/始まりを告げに訪れた/君の寝てる顔を見る度/ときどきかなしくなる〉という歌い出しで始まる“MESSENGER”は、出産を終えてから初めて作った曲だという。かけがえのない授かり物を手にした喜びに満ち溢れながら、「でも、私と同じように子供がいる方は、正直えらい時に子供を産んでもうたなって気持ちもあると思う」と、不安な時代を生きる母親の率直な心境も明かす。しかしそれでも、〈言えよ/未来はbeatiful/まだ見ぬ果てまで〉と、未来への希望を捨てない。

〈ダンスホール・ディーヴァ〉というイメージもあってか、PUSHIMと言えばこれまで歌のなかでは〈強い女性像〉を描いてきた印象が強い。今回のアルバムでも、ひ弱な男子にケリを入れるような“Make a pose!”、RUDEBWOY FACEとのコンビネーション“Dancehall Dynasty”のように凄みを利かせた痛快な楽曲はあるし、“My Endless Love”や“HEART BREAKER”といったメランコリックなナンバーで失恋の痛手を受けても前へと進もうする気持ちを描いているあたりは、これまでの彼女と同じように〈強さ〉が表れたアプローチと言える。

しかし、出産/育児という個人的な体験、そして〈3.11〉という大きな出来事を経て、PUSHIMの歌は新たな強さを得た。“You were a little boy”で欺瞞ばかりを垂れ流す社会に唾棄する強さは、大事なものを守る母親としての本能からくるものだろう。その一方で、MIHIROを迎えた“誓い”は妊娠が判明した直後に書かれた歌詞で、これから母になることへの不安や葛藤、決意が赤裸々に綴られている。「ちょっと恥ずかしいぐらいに、パーソナルなアルバムになった」のは、みずからの弱い部分もさらけ出すことのできる、〈表現者としての強さ〉をPUSHIMが手に入れたことの証だろう。これは、彼女の新しいステージの幕開けを告げる〈MILESTONE〉な作品なのだ。

▼関連盤を紹介

左から、PUSHIMの2011年のミニ・アルバム『MESSENGER』(NeOSITE)、PUSHIMが参加したコンピ『JAPANESE REGGAE IN ACOUSTIC』(RIDDIM ZONE)

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