こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

矢沢永吉

連載
NEW OPUSコラム
公開
2011/08/11   18:00
ソース
bounce 331号 (2011年4月25日発行)
テキスト
文/岡村誌野

 

どこで演っても矢沢は矢沢。いつもより小さいステージで魅せたライヴ映像がついに登場!

 

矢沢永吉_A1

 

いまの矢沢永吉がこれまでになく柔軟で、なおかつ攻めの姿勢を貫いていることが実感できるライヴDVDが2種届いた。ひとつは2006年に行なわれたブルーノート東京でのステージを、もう一方は2005年のライヴハウス・ツアーからZEPP TOKYOでの公演を収めたもの。いずれもプレミア・チケットだった貴重なパフォーマンスが楽しめる内容で、武道館が似合う男にしてはやや不似合いな狭い会場ながら、それでもいつも通りにロックンロールしようとする矢沢のヒューマンな表情が実に眩しくて、良い。

わけてもブルーノート公演の映像が最高だ。応募抽選による150組のラッキーなカップルたちで埋められた座席の列をくぐり抜けて舞台に上がるや、肩をすくめて照れ笑い。ちょっと居心地が悪そうに、でも客席を見渡してすぐさまマイクを握る。バラードを中心とした選曲は着席してお酒や料理をいただきながら楽しむ場の雰囲気を考慮してのものだろうが、それでも次第にいつもの矢沢風情が滲み出ていく。メンバー紹介でコーラス嬢の名前を間違えるなどのご愛嬌も、実はお茶目な矢沢の素顔。“Oh!ラヴシック”など近年の定番曲も最後に披露して、満足度100%だ。また、ZEPP公演のほうはと言えば、すぐさまシャツを脱いでTシャツ姿になるなど序盤から全力疾走。それでもひとりで突っ走ることなく、すし詰め状態のフロアを丹念に眺めながら、客席と一体化しようとする様子は流石の一言に尽きる。

この2本を観ると、矢沢は常にオーディエンスとしっかり対峙していることに気付かされるだろう。そしてもちろん、アンコール前はブルーノートでも客席から〈永ちゃん、永ちゃん〉の大合唱。そこがいつもの武道館でも朝イチのフェスでも狭いハコでも矢沢は矢沢。フロアで突き上げられた手がそこにある限り彼は歌い、ロックで語りかける。つまりはそういうことだ。