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BO NINGENのサイケデリック見世物小屋(第2回)

連載
皿えもん
公開
2011/08/18   09:51
更新
2011/08/19   15:49
テキスト
文/Yuki(BO NINGEN)


アーティストが各テーマに沿ったお皿(CD)を紹介する連載! 海外では日本の音楽がどう捉えられているのかを、イギリス在住のBO NINGENの視点でお届けします。今月の担当は、ギターのYuki!!

 

皿えもん_BO NINGEN_特集カバー

 

[ 今月の夜話盤 ] NOISE 『天皇』 アルケミー

 

こんにちは。
BO NINGENのギターのYukiです。

今回ご紹介するのは、NOISEの『天皇』という作品。
名前からしてすでにタブーかつエクストリームな雰囲気ですが、
現マヘル・シャラル・ハッシュ・バズのリーダーである工藤冬里と大村礼子によるユニットの唯一の音源作品です。

何故か山崎ハコの『人間まがい』と非常に迷ったんですが、
より諦念的であり、僕に覚醒をもたらしたという点でNOISEのほうを選びました。
工藤冬里のオルガンに、大村礼子のヴォーカル、時折パーカッションというシンプルなセットアップですが、凄まじい音像の広がりを見せてくれます。

海外の音楽家と比較して、日本のそれらの多くは、
二つの背反する事象を反転、あるいは同化させることに非常に優れていると思うのですが(たとえば、裸のラリーズ)、
この『天皇』というアルバムも例に漏れず、恣意的な矛盾を孕んでいます。
混沌と安堵、宗教的であり機械的、また浄化と堕落。
蔓延するエコーとオルガンが生み出す激しい情念の渦を、祈りが満たしていくようなアルバム。

安らぎであり、ノイズであり、小さな小さな賛美歌であり、呪術のようでもある。

さらに言うなら、創造と破壊の両面を持ち、不断に蘇る大地母神のような観念を、
極度にグロテスクに表現した作品ではないかなあとも思えてきます。
アンダーグラウンドという名のいつまで経っても終わらない黎明のなかで主の声を待ち焦がれ続ける、忘却が召喚する永遠の調べ。

大好きなアルバムです。
聴いたことのない方はぜひとも聴いてみてください。


PROFILE/BO NINGEN

Taigen(ヴォーカル/ベース)、Kohhei(ギター/エコー/ファズ)、Yuki(ギター/エコー/ファズ)、Mon-chan(ドラムス/ポールダンス)から成る、ロンドン在住の日本人男性4人組バンド。2009年、UKのストールンから限定EP『Koroshitai Kimochi』でデビュー。元カンのダモ鈴木やファウストらとの共演を重ね、その強烈なサイケ感を纏ったサウンド/破天荒なライヴ・パフォーマンスはホラーズのファリス・バドワンにより絶賛される。2010年11月にはファースト・アルバム『Bo Ningen』(Stolen/Knew Noise)を発表。そんな彼らのスケジュールについては、こちらのサイトをご覧ください。

 

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