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くるり

連載
NEW OPUSコラム
公開
2011/08/24   18:55
ソース
bounce 335号 (2011年8月25日発行)
テキスト
文/鬼頭隆生

 

新編成前、最後のツアーのラストを飾る感動的な一夜を収めたDVDが登場です!

 

くるり_A

 

ここ最近のくるりは、シングルのカップリング集やベスト盤の第2弾、詩集などを発表する一方で、新メンバー3名が加入するなど、活動の総括と並行して新たなフェイズを迎えている。そんな折に届いたのが、ライヴDVD「武道館ライブ」。実はこれが、バンド編成でのくるりによるライヴをフルで収めた初の映像作品だ(過去にドキュメンタリーやオーケストラとの共演ライヴのDVDはあり)。

今年の3月初頭に行われたこの武道館ライヴは、最新作『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』のリリース・ツアーの最終公演で、ギターの山内総一郎(フジファブリック)とドラマーのBOBO(54-71)をサポートに迎えた4人編成で行われている。ステージ上には漫画家の吉田戦車が描いた(くるりのメンバーと思しき)イラスト入りのノボリや行燈、松明が置かれているが、〈言葉にならない〜〉は作為や意匠を抑えて、岸田繁の内から湧き出るメロディーと言葉を紡いだことで日本人的なアイデンティティーが色濃く表れたアルバムだったから、この舞台セットにも納得だ。

ライヴは最新作からの曲を中心に、“ワンダーフォーゲル”“ロックンロール”などの定番曲を挿んで進む。どんな曲も演奏は肩の力が抜けた熟達したもので、何度もお互いに顔を見合わせながら音を重ねていく。山内が弾くユニークなフレーズも効果的だ。“鹿児島おはら節”“温泉”で日本人の心を表現し、続けて“さよならアメリカ”を演奏する示唆的な流れもありつつ、終盤にはコーラス隊や鍵盤、パーカッションも加わって“ばらの花”“リバー”などを華々しく奏でている。そしてラストはこのライヴ当時は未発表だった“奇跡”。この曲で讃えられるのは〈当然のように過ぎていく退屈な毎日〉——そう、このライヴ直後に起こった〈3.11〉も、今回のリリースと無縁ではないはず。本作は変わり続けるバンドのある瞬間の記録であり、そこには彼らが楽曲に託した思いが息づいている。

 

▼くるりの作品を紹介。

左から、2010年作『言葉にならない、笑顔を見せてくれよ』、ベスト盤『ベスト オブ くるり / TOWER OF MUSIC LOVER 2』(共にスピードスター)