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映画『ジュリエットからの手紙』

公開
2011/11/08   11:00
ソース
intoxicate vol.94(2011年10月10日発行)
テキスト
text:吉川明利(タワーレコード本社)

女性必見!イタリア・トスカーナ地方の美しい風景と二つの恋の物語



おそらくイタリアへ旅行するのが好きな女性、もしくはシェイクスピア好きの人なら先刻ご承知だったのかもしれないが、この映画は実際にイタリアの観光地であるヴェローナに存在する「ロミオとジュリエット」の主人公である、ジュリエットの生家を物語の発端としている。オリビア・ハッセーの『ロミオとジュリエット』にゾッコンになったのに、そんな場所があることは知らなかった。世界中からジュリエット宛に、恋に悩む女性たちから手紙が届き、〈ジュリエットの秘書〉と名乗る数人の女性たちが、この手紙に返事を書いている。それも知らなかった。映画って本当にいろんな事を教えてくれる、だからやめられないのだ!

主人公ソフィを演じるのは若手有望株のアマンダ・セイフライド。しかし、この女優のやっかいなところは、どのカタカナ表記が正解なのか分からない点。作品によってはセイフライドではなく、サイフリッドと記される(『赤ずきん』『親愛なるきみへ』)のだ。いかに売れっ子と言っても、まだ『あぁ、『マンマ・ミーア』のお嬢さん役の子ね』と、すぐに名前が出てこない上に、表記が定まっていなければ、別人かと思われてしまっても仕方がない。統一してあげないと可哀想だなぁ。

婚約者がいるソフィなのに、この〈ジュリエットの秘書〉と出会ったことで、別の人生の方向に向かおうとする展開が、多くの女性の共感を得るだろう。そのソフィの物語とは別に、50年前の恋を探し求めるクレアという女性が登場する。ふたりの女性のふたつの人生が交差する、二重構造の物語が魅力的な映画だ。

クレアを演じるのが1977年に『ジュリア』でアカデミー助演女優賞を獲得したヴァネッサ・レッドグレイヴ。オスカー賞受賞式での政治的発言で、血気盛んぶりを示した彼女も、この撮影当時で72歳。1968年『裸足のイサドラ』でイサドラ・ダンカンを、見事に演じた美しさは忘れられない。今や、世界が認める大女優ですね。クレアが探す50年前の恋の相手ロレンツォに扮するのが、実生活でもヴァネッサのパートナーであるフランコ・ネロ。そう、あのマカロニ・ウエスタンで名を馳せたスター俳優だ。ふたりは1967年のミュージカル『キャメロット』で共演、すでに恋に落ちていたのだ。こうした洒落たキャスティングも見どころのひとつだ。

でも、この映画の最大の見どころは、ロレンツォを探す旅の間に映し出される、トスカーナ地方をはじめとした美しいイタリアの風景だろう。なんでもCGで作り出せると勘違いしている最近の映画界にあって、このロケーションの温もりのある美しさは貴重品だ。ロレンツォという名前はイタリアの田舎には多いのだろうか?「俺もロレンツォだ!」の連発シーンには爆笑だ。でも一人の男の「俺じゃダメかい?」とクレアに言い寄るところがイタリアらしくて、さらに爆笑。それだけヴァネッサが美しいのです。DVDには映画のモデルとなったジュリエットクラブを紹介するドキュメンタリーをはじめとした特典映像が満載。女性必見の感動作ですよ。