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BO NINGENのサイケデリック見世物小屋(第6回)

連載
皿えもん
公開
2011/12/20   20:00
更新
2011/12/20   20:00
テキスト
文/Yuki(BO NINGEN)

アーティストが各テーマに沿ったお皿(CD)を紹介する連載! 海外では日本の音楽がどう捉えられているのかを、イギリス在住のBO NINGENの視点でお届けします。今月の担当は、ギターのYuki!!

 

 

[ 今月の一枚 ] 山本精一&Phew 『幸福のすみか』 WAX

 

ご無沙汰しております。BO NINGENのYukiです。
もう年の瀬ですね。飲んでますか?

今回ご紹介するのは山本精一&Phew、という、
もうすでにご存知の方も多いと思う二人が、
文字通り、デュオになって録音した『幸福のすみか』というアルバム。

これを書いているいま、ちょうどツアーで日本に来ているのですが、
〈冬の日本〉というものと切っても切り離せない音楽が、
どうしてこんなに沢山あるのか――寒く、透明で澄み切った朝、
珈琲あるいは煙草、路地あるいはベランダ、セックスあるいは恋の痛手といった、
感情と感傷の数々。狼狽悔恨その後の爽快――そんな音楽。
つまり、『幸福のすみか』は日本の冬に非常に良く似合うアルバムだということです。
カヴァー・デザインも、さながらヌーヴェルヴァーグのような趣で好みであります。

そうした意味では、〈自分は日本人なのだ〉ということを認識したうえで
好きな音楽なのかもしれませんが、
こういった日本のフォーク・ミュージックの多くは、
欧米ではいわゆるアヴァン・フォークとかネオサイケなどといった括りで、
時には実験音楽の範疇で語られることが多く、
恐らくこのアルバムもそういった類に分類されるのでしょうが、
サイケだとかアレだコレだとか、
そういったスタンダード化とカテゴリゼーションは野暮だと思わせてくれる、
普遍的な楽曲の数々。本当に曲が良いです。
珍奇な歌詞と共にあくまでも脱力していく、
決して上昇しない、下りていくポップネス。
それが欧米では魅力なのかもしれません。

余談ですが、この『幸福のすみか』というタイトル、
そして表題曲の“幸福”を〈しあわせ〉と読むのは僕だけではないと思います。
〈こうふく〉よりも牧歌的でひどく曖昧な、〈しあわせのすみか〉。
それはきっと存在しないものですが、もしかしたら、あるいは。

Phew嬢が〈わたしは自由だ〉と囁くとき、
そんな想像も膨らむ奇妙なアルバムです。


PROFILE/BO NINGEN

Taigen(ヴォーカル/ベース)、Kohhei(ギター/エコー/ファズ)、Yuki(ギター/エコー/ファズ)、Mon-chan(ドラムス/ポールダンス)から成る、ロンドン在住の日本人男性4人組バンド。2009年、UKのストールンから限定EP『Koroshitai Kimochi』でデビュー。先週ニューEP『Henkan/Jinsei Ichido Kiri』(Stolen/Knew Noise)をリリースした彼らは、現在ツアーを控えて来日中。BO NINGENとして以外にソロとして出演のライヴも続々と決定しています! そんな彼らのスケジュールについては、こちらのサイトをご覧ください。

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