こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

Yuji Ohno&Lupintic Five

公開
2011/12/21   19:53
ソース
intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)
テキスト
文:桑原シロー

目下、絶好調の大野雄二とルパンな5人たち

Yuji Ohno & Lupintic Fiveのニューアルバム『Eternal Mermaid』がもう出てしまった。「もう」という一言に込めた驚嘆の思いをぜひご理解いただきたい。前作『Let's Dance』から半年、彼らのダンスはまだまだ勢いを増している。それにしても、大野雄二のヴァイタリティーには目を瞠るばかりだ。絶好調で燃えまくるメンバーたちと共にジャズのカッコよさを日本中に広く知り渡らせる活動を続けているが、古希を迎えてなお誰よりもハッスルしている様子に、驚嘆の思いを込めて「もぉ〜」と呟かずにはいられないのだ。

本作は、12月2日にオンエアされた金曜特別ロードショー『ルパン三世 血の刻印〜永遠のmermaid〜』のオリジナル・サウンドトラックである。テレビアニメ版の誕生から40周年を記念したこのシリーズ最新作。石川五ェ門、峰不二子、そして銭形警部といった主要キャストの声優が入れ替わったことで話題となったが、イカした劇伴も新鮮に響いていた。ところで、大野雄二によるルパン音楽が登場したのは、77年のこと。40周年までまだだいぶあるが、そのときには何か豪華な企画が実現するんだろうか? ま、現状の充実ぶりを見る限り、何か楽しいことが待っているだろう。そう思うのである。

内容は、いつものごとくライヴ感満載で、エンターテイメント性の高いジャズ・アルバムとなっている。ピアノの大野雄二をはじめ、ドラムスの江藤良人、ベースの井上陽介、トランペットの松島啓之、サックスの鈴木央紹、ギターの和泉聡志というセクステットが、ときにクールに漂い、ときにファンキーに突進しながら、ハラハラするような活劇的世界を描き出していく。今回は〈with Friends〉名義となっていて、中川英二郎(トロンボーン)や中川昌三(フルート)、金子雄太(オルガン)などのサポートを受けて吹き込んだ曲もあり。エキサイティングな揉み合いを繰り広げながら、場を熱くしてくれている。

幕開けは、ビッグバンド・サウンドのような迫力で迫りくる《J.G.》が登場。おなじみ《ルパン三世のテーマ〜2011 Action version〜》も、大井貴司によるヴァイブほか各プレイヤーによるハード・アクションが画面狭し(いや、スピーカー狭しか)と炸裂する痛快作となった。一方《ルパン三世のテーマ〜2011 Slow version〜》は、オシャレなボサノヴァに変身。こちらはメロディの良さを堪能させてくれる仕上がりに。じっくり聴かせるナンバーでは、《Memory of Smile》が出色の出来。初代ルパン三世の声を務めた山田康雄が味なヴォーカルを聴かせているオリジナル(『TOKYO TRANSIT〜featuring YASUO YAMADA〜』収録)はいまも人気が高いが、飛翔感たっぷりな大野雄二のエレピの音色で気分はフライングハイ、といったこのヴァージョンも素敵だ。2000年の『LUPIN THE THIRD〜Isn't It more Lupintic?』ではTOKUのフリューゲルホルンをフィーチャーしていた《Lonesome City Breeze》も、アンニュイさが増していて快適な聴き心地。

クライマックスはやっぱり、EGO-WRAPPIN'の中納良恵が登場するラスト・シーンになろうか。『LUPIN THE THIRD〜 the Last Job〜』の《笑う太陽》、『Let's Dance』の《あの日の絵画》&《ルパン三世のテーマ》に次ぐゲスト参加であり、もはや専任ヴォーカルと見なしてもいいのでは? で、今回ヨッちゃんが聴かせてくれるのは、サンドラ・ホーンが歌った「ルパン三世」第2シリーズ・シーズン3のエンディング・テーマ《Love Squall》だ。サンドラ・ホーンとは、先ごろサンディー・アイとして発表した75年のデビュー・アルバム『くちづけは許して』がリイシューされたばかりのサンディーの変名である。カヴァー曲が多数あり、最近もテレビCMで使われて人気を呼ぶなど、ルパン関係でもっとも人気のある一曲といっていいこのバラードに、大野御大がこよなく愛する歌姫がトライしているわけだが、頭の上から光が降ってくるような贅沢な体験が待っていた。御大の「お姫様スタイルで歌ってくれ」という注文に応えてこの歌い方になった模様だが、超グルーヴィーで爽快感満点なサウンドに乗っかって泳ぐここでの彼女は、なんだか天女のようだ。御大が彼女に惚れ抜いていることがよく分かるエレガントなアレンジが堪らなく良い。まだまだ勢いは止まらなそうな気配がひしひしと伝わってくる『Eternal Mermaid』。いまのLupintic Fiveには、永遠にお祭り騒ぎを続けていってくれそうな頼もしさがある。この分じゃ新作の到着もそう遠くなさそうだし、すぐにまた驚嘆の思いのこもった一言を発することになりそうだ。


LIVE INFORMATION
『Yuji Ohno & Lupintic Five
Lupintic Jazz Live Tour 2011 Winter ~Eternal Mermaid~』

12/21(水)下関市ふれあい会館
12/23(金)Motion Blue YOKOHAMA12/26(月)Billboard LIVE OSAKA
12/29(木)名古屋ブルーノート
1/20(金)北國新聞 赤羽ホール
1/21(土)ハーモニーホールふくい
1/22(日)富山県民会館
2/4(土)昭島市民会館
2/19(日)青葉の森公園芸術文化ホール
2/24(金)鶴見区サルビアホール
2/26(日)神戸新聞松方ホール

RELATED POSTS関連記事