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世界は動き出しそうで動かない――そんな2011年を象徴する10枚とは?

連載
久保憲司のロック千夜一夜
公開
2011/12/28   18:00
更新
2011/12/28   18:00
テキスト
文/久保憲司


ロック・フォトグラファーとして活躍、さらにロック・ジャーナリストとしての顔も持つ〈現場の人〉久保憲司氏が、ロック名盤を自身の体験と共に振り返る隔週コラム。今回は、年末の特別企画として2011年のベスト・アルバムを。世界は動き出しそうで、動かない。世界は冷たい。そんな今年を象徴する10枚とは――?



悲惨な2011年が終わろうとしている。来年が良い年になるように願うが、その兆しは一向に見えない。橋下徹市長による〈大阪から国政への挑戦〉が唯一の希望としか思えないのだが、〈橋本は独裁だ〉と足を引っ張ろうとする声を聞いていると、〈お前ら一体どうしたいねん〉という苛立ちを覚える。

先日、オキュパイ・ロンドンの人たちに会って、〈日本の原発を止めるには、オキュパイ運動が有効なんじゃないかと思うけど……〉と話をしたら、そんな能書きは聞く耳持たないという感じで、〈オキュパイ・トウキョウだけじゃダメだろ。オキュパイ・キョウトも、オキュパイ・オオサカもないとダメだろ〉と喝をを入れられました。主義、主張よりも行動しろよという感じでした。元気な人たちです。オキュパイ・ロンドンはトム・ヨークやマッシヴ・アタック、ヴィヴィアン・ウエストウッドなどが支援を表明していますが、イギリスのほとんどの人は、自分のクリスマス・ショッピングに忙しく、けっこう冷めた目で見てました。

世界は動き出しそうで、動かない。それが2011年だったのではないでしょうか。世界は冷たいって感じです。僕の今年のベスト・アルバム10枚もそんな感じです。

「CRSSBEAT」での僕の年間ベストの第1位はジェイムズ・ブレイクだったのですが、あまりにもたくさんの人が彼を1位にしていたので、ここでの1位はボン・イヴェールの2作目『Bon Iver』にします。録音スイッチを押す音が聴こえるのような前作『For Emma, Forever Ago』に比べるといろんなアーティストが参加して豪華になったなと思っていたのですが、いま聴き比べるとあまり違いがないように思います。現代のブルースのような気がします。

2位ジェイムズ・ブレイクのアルバムもそんな感じがします。コンピューターに自分のソウルを吹き込む感じが格好良いです。ボン・イヴェールやジェイムズ・ブレイクのようなブルースを僕もいつか作れるようになるんでしょうか?

3位はニュー・ポルノグラファーズのダン・ベイハーのソロ・プロジェクト、デストロイヤーの『Kaputt』です。ロンドンのレコード屋での店員さんがみんな“Chinatown”を歌いながら仕事をしているのをみて、いっぺんに好きになりました。デストロイヤーは僕が子供の頃に大好きだったピーター・ゴドウィンとダンカン・ブラウンのメトロを思い出させます。いまで言うとベル&セバスチャンですかね。こちらは自分のソウルやブルースを歌うんじゃなく、物語を作って歌っていく世界な感じがします。こちらも憧れるな。

4位はガールズの2作目『Father Son Holy Ghost』です。シンプルにギターで曲を作っている感じが格好良かったです。

5位はウォー・オン・ドラッグスの『Slave Ambient』、6位はカート・ヴァイルの『Smoke Ring For My Halo: Deluxe Edition』。カート・ヴァイルの理由は前回書いた通りです。よかったら、読んでください。

そして、7位はトロ・イ・モワの『Underneath The Pine』、8位はユース・ラグーンの『The Year Of Hibernation』、9位はジョン・マウスの『We Must Become The Pitiless Censors Of Ourselves』。3組とも宅録アーティストって感じですね。もう少し、バンドっぽいバンドが出てきたらいいのにと思った2011年でした。でも、みんな宅録っぽいから、自由に幅広くいろんなことをやっているのが、羨ましくも思いました。

9位までに、イギリスのアーティストはなんと一人だけですよ。しかもメロウな音楽ばかりです。こんなんで大丈夫なんでしょうか? なので、10位にイギリスのバンドを入れておきます。ヴァクシーンズの『What Did You Expect From The Vaccines ?』は曲とかすごくいいですけど、歌っていることは、別れた彼女に〈戻って来たかったら、戻って来てもいいんだよ〉と歌う“If You Wanna”みたいに情けない曲が多いんですけど、いまのイギリスの男の子はこんな感じなんでしょう。

2012年はどんな年になるのか全然見当もつきませんが、皆さん、よいお年を。

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