こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

N.アーノンクール『スメタナ:我が祖国』/『ベートーヴェン:運命』他

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/01/10   19:00
ソース
intoxicate vol.95(2011年12月10日発行)
テキスト
text:北村晋(タワーレコード本社)

N.アーノンクール『スメタナ:我が祖国』/『ベートーヴェン:運命』他
──驚きの連続。アーノンクール、渾身の「我が祖国」映像

2010年に同じくベートーヴェンの交響曲第5番と、ミサ曲ハ長調をリリースしたアーノンクールが、同じヨーロッパ室内管を指揮して『我が祖国』を演奏したDVDが今年も発売された。これは2010年にオーストリアのグラーツ、ヘルムート・ハレで行われた、第25回目のシュティルアルテ音楽祭でのライヴ映像と 〈メイキング〉と題されたリハーサル風景とアーノンクール自身の曲目解説を入れたDVDの2枚組セット。これまでVPOとのCDがあるものの、映像としてはこの曲は初のリリースとなる。音だけだと一風変わった『我が祖国』という印象であったVPOとの演奏と比較して、映像で観ていることもあってか、より〈やりたいこと〉が反映された演奏、と言うべきか。まずリハーサル時からオケのメンバーの目つきが違う。もちろんアーノンクールを中心に創設された音楽祭であるので、取組み姿勢が彼の指揮だと異なるのかも知れないが、とにかく、〈この曲に新たな歴史を刻む〉意気込みが観ている我々にも伝わってくるのだ。『モルダウ』など通俗名曲になってしまった曲であっても(だからこそ)、決して流すようなことはせず、じっくり曲と向き合っていく(メイキングでも強く主張している)。総じて遅めのテンポであることに加え、細部が良くわかるように提示してくれるので、1曲聴き終えた後の充実度が高い(と同時に聴く方の疲労感も高いかも知れない)。彼ほどじっくり時間をかけて『我が祖国』を演奏する指揮者はこれまでにもいなかったのではあるまいか。彼の〈やりたいこと〉とはイコールこの曲の芸術的価値の高さを伝えることに他ならない。この曲が好きな方であれば尚更、至る所に新たな〈発見〉があり、驚きの連続のはずだ。

尚、このDVDには詳細な解説や多くのカラー写真が収められ、パッケージの装丁も本のようになっていてモノとしての価値も非常に高いのが嬉しい。また、日本ではタワーでのみ販売されている。

RELATED POSTS関連記事