アーティストが各テーマに沿ったお皿(CD)を紹介する連載! 海外では日本の音楽がどう捉えられているのかを、イギリス在住のBO NINGENの視点でお届けします。今月の担当は、ドラムスのMon-chan!!
[ 今月の一枚 ] たま 『まちあわせ ベストアルバム』 クラウン
新しい年も始まり、2011年を振り返りながら今年の行方に思いを巡らせているわけですが、
「たまの映画」がおよそ1年前に公開されたのも記憶に新しいところ。
そんなこともあって、今回はたまを紹介させてもらおうと思います。
紹介するにあたって『しおしお』『きゃべつ』『パルテノン銀座通り』など、どの作品にしようか悩んだのですが、
その挙げ句、この『まちあわせ ベストアルバム』に落ち着きました。
無難です。とても無難だと思います。
ですが、この密度の濃さは他の追随を許さない素晴らしさ。
ベスト盤のあるべき姿、ここからさらにいろいろな作品を聴いてみたい衝動に駆られることと思います。
映画の話に戻りますが、解散後のメンバーの日常を追ったドキュメンタリーです。
彼らのその、音楽に対する飾らない姿勢に感動します。
ステージ上と、日常のなかで街を歩く姿の差をここまで感じさせない人たちもいないのではないかと。
ある種のプライドと強さを持ちながらも良い感じの脱力感。音楽との付き合い方もいろいろあるな、と。
ますます好きになりました。自分に正直に生きるって難しいことだと思いますし。
よかったらこちらのほうも観てみてください。
彼らの音楽にはいつも温かさがあり、
民家の横を通り抜ける時に漂うような生活の匂いがあり、
子供の持つ残酷さがあり、
密に練られた妄想の渦に身を投じるような感覚になります。
日本人でしか作り得ない曲の数々ではないでしょうか。
“そんなぼくがすき”という曲のなかに、
かなしい夜がすきだから
かなしい朝はきらい
たのしい朝もきらい
そんなぼくがすき
とあります。なんなのでしょう? この感じ。
こんなに不安にさせられる歌詞の曲を〈みんなのうた〉で放送しているNHKも凄いですが……
どこか、谷山浩子さんの“まっくら森の歌”同様に子供の頃の形にならない不安や気配を見事に音にされたような感じがします。
外側だけでは語ることのできない、素晴らしいオリジナリティーの作品群。
ぜひ聴いてみて下さい。
BO NINGENはまさにいま、日本ツアーの只中。
僕らも僕らにできることをこれからも正直にやっていくのみです。
文中に登場したアーティストの作品
PROFILE/BO NINGEN
Taigen(ヴォーカル/ベース)、Kohhei(ギター/エコー/ファズ)、Yuki(ギター/エコー/ファズ)、Mon-chan(ドラムス/ポールダンス)から成る、ロンドン在住の日本人男性4人組バンド。2009年、UKのストールンから限定EP『Koroshitai Kimochi』でデビュー。先週ニューEP『Henkan/Jinsei Ichido Kiri』(Stolen/Knew Noise)をリリースした彼らは、現在ジャパン・ツアーの真っ最中。合間にソロとして出演のイヴェントも挟みながら、全国を旅しています! そんな彼らのスケジュールについては、こちらのサイトをご覧ください。