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アナログフィッシュ@渋谷CLUB QUATTRO 2012年2月5日(日)

連載
bounce編集部のイマココ。
公開
2012/02/05   23:10
更新
2012/02/05   23:10
テキスト
文/土田真弓


アナログフィッシュ_0205



先週更新した年末年始特集〈OPUS OF THE YEAR pt.6〉のなかで、
2011年の個人ベストに挙げたアナログフィッシュの最新アルバム『荒野/On the Wild Side』。

本日行われたリリース・ツアーのファイナル、
渋谷CLUB QUATTRO公演を観てあまりにも胸がいっぱいになりまして、
その勢いのままにこの文章を書いております。なかの人です。

これまでの作品と比較して、より表現がストレートになった上述の作品ですが、
それがもっとも端的に表れている楽曲が、

〈失う用意はある? それともほうっておく勇気はあるのかい〉

という強靱な一節を含む“PHASE”。

〈3・11〉以前に書かれた楽曲だそうですが、
いまの世には非常に大きな意味を伴って響くこの楽曲において、
詞を手掛けた下岡さんがフロアを見据え、フロアに向けて掲げる拳を観るたびに、
わたしはハッとするのです。

共闘……と言ってしまうと言葉が強すぎるのですけれども、
なんだか拳を合わせる感覚があると言いますか、
この先のフェイズへ向けて荒野を往こうという彼らの決意を
その拳を通じてまのあたりにしているような気がして、
じわじわと込み上げる昂揚感で胸がいっぱいになります。

本作はビート・オリエンテッドな楽曲が多く、
ひとつひとつの言葉がフィジカルに、リズミカルに耳に入ってくるというのも、
メッセージ性をよりわかりやすく届ける一助になっているように思います。

飄々とステージ上を飛び回る下岡さん、
時々視界から消えるほどに直情的な動きを見せる健太郎さん(例えば消音していたとしても、
表情を見ればいまどんなフレーズを弾いているのかあからさまにわかるであろう、
いわゆる〈顔で弾くタイプのベーシスト〉だと思います)、
修行僧のように淡々とリズムを刻み続ける州一郎さん、
……と、キャラクターはそれぞれながら、
放たれている熱量も、向かっている方向性も揃っている。

それは楽曲についても言えることで、
本日のハイライトは下岡さんによる、ある意味では挑発的な“PHASE”から
健太郎さんによる非常に開放的な“Fine”への流れだったかと思いますが、
極上のポップ・ミュージックに乗せて放たれる一本筋の通った〈意志〉が、
いまのアナログフィッシュの音楽の強さなのではないか、と。

「〈ナナナナ〉って歌うだけだから!」……などと煽りつつ、
いきなりお客さんにシンガロングさせていた新曲も良かったです。
メロディーへの言葉の詰め込み方に〈荒野〉以降を感じました。

下岡さんのMCによると、3月7日にリリースされるベスト+ライヴ盤
『ESSENTIAL SOUNDS ON THE WILD SIDE. Analogfish:THE BEST AND HIBIYA YAON LIVE.』では、
ベスト盤のほうにも新たなミックスが施されているそうなので、
この作品を〈荒野〉以降の第一歩と捉えても……よいのですかね?
いずれにしても、楽しみです。