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Lee Konitz&Zoot Sims『スター・アイズ・ライヴ・イン・アムステルダム 1958』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/05/17   17:03
ソース
intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)
テキスト
text:青木和富

フィニアス・ニューボーン、オスカー・ペティフォードの貴重な名演も

未発表音源の発掘は、昔からジャズ・ファンの関心の的だが、オランダのコンセルトヘボウのライブ・シリーズは、これまでとはちょっとかわった世界があって、近来にない面白さだ。何よりもクラシックの殿堂が舞台とあって、企画も特別なものだが、出演するミュージシャンも普段とは違った顔が見え、これが何とも興味深い。大舞台ということで緊張したり、また逆に、この雰囲気を大いに楽しんでしまうミュージシャンもいたりで、まさにこれは人様々だけれど、個性で生きているのがジャズ・ミュージシャンだから、どちらにしてもファンにとっては興味尽きない記録になっている。

たとえば今回の『スター・アイズ』だが、タイトルではリー・コニッツ、ズート・シムスのサックスの二人が主人公のような印象だが、実は天才的なピアニストと言われたフィニアス・ニューボーンとかつてのベースの重鎮オスカー・ペティフォードのファンは必聴の快作と言いたいと思う。

むろん、コニッツやズートがつまらないということはない。ただ、この2人の名手の代表的名演は他にもたくさんある。けれど、ニューボーンとペティフォードは、明らかにそれ以上遥かに貴重な名演と言いたい。

コニッツやズートのファンは、いわゆる名演とは違った観点で、この巨人たちの表現者としての人間的な愉快を楽しんで欲しい。そこかしこにウイットをちりばめるコニッツ、遊んでいるとしか思えないズートの演奏の楽しさ、それらに加えてもう一人のピアノの名手レッド・ガーランドの演奏も楽しい。こちらはズートと違って、普段以上にガーランド流の決まりのフレーズを連発し、大観衆にアピールしている雰囲気だ。かつて、田園コロシアムにガーランドが登場したとき、演奏そっちのけで歓喜するファンに投げキッスを送り続けたガーランドをふと思い出した。名演とは言いがたくとも快パフォーマンスであった。

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