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ジャン=リュック・ゴダール+ジガ・ヴェルトフ集団

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/05/19   19:26
ソース
intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)
テキスト
text : 畠中実

日本初リリースとなる幻の3タイトルを含む6作品完全HDマスター化。JLGファン待望のBlu-ray- BOX 発売!

1960年代後半から70年代初頭にかけて活動した、ジガ・ヴェルトフ集団は、フランス5月革命の年に結成された政治的映画集団である。ジャン=リュック・ゴダールとジャン=ピエール・ゴランのふたりが関わり、マルクス・レーニン主義に依拠し、映画製作にまつわるあらゆる制度の変革をめざし、作者という特権的な存在ではなく、共同制作による匿名的な映画を標榜した。

60年代の後半とは、ゴダール自身その作風を先鋭化させていった時代でもあった。1967年のオムニヴァス映画『ヴェトナムから遠く離れて』ヘの参加、『中国女』をへて、『ウィークエンド』、68年には『ワン・プラス・ワン』といった作品が作られていく。一方、クリス・マルケルの主導したシネトラクト(アジビラ映画)の制作や、ゴダールが撮影し、ジェラール・フロマンジェが監督した68年の作品《ルージュ(赤)》などを制作、「商業映画との絶縁」を指向していく時代でもある。

パリの撮影所を離れ、世界のさまざまな土地へと赴き映画を撮るため、35ミリフィルムから16ミリフィルムに移行するということに象徴的に表わされる、機動的な活動的映画作家像をめざした。それは、以降アンヌ=マリー・ミエヴィルとの共同作業によるヴィデオ使用という、次なるフェーズへと移行していく。

ジガ・ヴェルトフ集団の作品は、当時でさえも制作を依頼したTV局からの放映拒否などによって、完全な形で上映、放映されたものは少ない。しかも、商業的な意味に価値をおいていない映画であるから、難解ですらある。ゆえにこれまでも一部を除いてなかなか観る機会がなかったものである。しかし、ここにはイデオロギーを抜きにして、現在にまで連続する映像表現の実験を垣間見ることができるのも確かだと思う。

『ワン・アメリカン・ムーヴィー』『ブリティッシュ・サウンズ』『プラウダ』『イタリアにおける闘争』といった作品はまだソフト化されていない。

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