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渡邊一正(指揮)東京佼成ウィンドオーケストラ『吹奏楽燦選』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/05/29   21:23
ソース
intoxicate vol.97(2012年4月20日発行号)
テキスト
text:星野大介(渋谷店)

練り上げられた選曲と緻密な音楽づくり!今までにない吹奏楽傑作選が登場!

この数年、国内で発売される吹奏楽CDの1つの特徴として、かつて中学〜高校時代に吹奏楽を経験した現在40代前後のリスナーをターゲットとした〈懐かしい定番曲集〉的なものが多くリリースされていることが挙げられる。そしてこの春、我が国を代表するプロ吹奏楽団「東京佼成ウィンドオーケストラ」が満を持して発売する、『吹奏楽燦選』と銘打ったこのアルバムには、主に1970年代〜1980年代を代表する吹奏楽コンクール課題曲と国内外の作曲家による吹奏楽のためのオリジナル作品が収録されているが、それだけに留まらず、2011年以降に発表された今後の吹奏楽界において重要なレパートリーになるであろう作品を3作品も加えた大変な意欲作となった。また暫くポップスアレンジなどの録音&発売が続いていた東京佼成ウィンドが、久々にオリジナル作品をじっくりセッション録音した点においても、実に興味深いアルバムである。

《アルヴァマー序曲》や《たなばた》、《フェスティヴァル・ヴァリエーション》に《ディスコ・キッド》等々。それぞれの世代に青春の想い出を喚起させる、〈美メロ〉満載の作品が実にハイレヴェルな演奏で次々に登場する。例えば、とかく疾走するテンポに頼りがちな 《アルヴァマー序曲》は、作曲者指定の(と思われる)落ち着いたテンポで雄大なメロディが丁寧に描かれる。また《たなばた》冒頭の中低音によるコラールはブラームスの交響曲で聴けるそれを髣髴とさせる素晴らしさだし、難曲《フェスティヴァル・ヴァリエーション》では各セクションの細かく入り乱れるリズム同士のアンサンブルが「さくっ」と見事に決まっている。

新曲では、昨年話題を呼んだP.スパーク《陽はまた昇る》の美しさに心を打たれる。音楽上の派手で表面的な演出は一切ないが、聴けば聴くほどに作品の素晴らしさを知ることができる上質のアルバムだ。これぞ名門プロ吹奏楽団の真骨頂!

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