こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

NEWS & COLUMN ニュース/記事

セルジュ・チェリビダッケ『Sergiu Celibidache Conducts Bruckner 』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/07/05   17:15
ソース
intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)
テキスト
text:藤原聡(新宿店)


生誕100年!レコード録音をしない「幻の指揮者」の貴重な記録


チェリビダッケの音盤(懐かしい言い方)について書くのは複雑な心境である。実演を聴いていないからだ。そんなことを言えばもっと昔の過去の巨匠だって同 じではあるが、チェリの場合は最近であるし、聴く気になれば聴けたからである。さらに、あんな方こんな方が、チェリの実演がいかに物凄いものだったかを タップリ語っているではないか。実演に接している人は、目前のオーディオから響いてくる音を聴きながらも頭の中でそれと記憶を結びつけて「補正」する(1 回限りの実演は、それが凄ければ凄いほど後々美化されるのは否定できまい)。聴いていない人は、言うまでもなく音だけでも素晴らしすぎるので虚心に耳を傾 ける。それで十分、と言うか満足せねばねるまい。

さて、内容。DVDの3曲に関しては過去にLDで発売されていたものだが、音質がLDに比べて明らかに向上。定位が明快、かつクリアになっている。これに より、彼らの際立った美質である音響の透明さ、明快さがよりはっきり伝わってくる(ちなみにチェリが亡くなった翌1997年の若杉弘、2007年のティー レマンとのミュンヘン・フィル来日公演を聴いてその独特の音に驚いた記憶が蘇る。特に後者はチェリが亡くなってから10年以上経過しているにも関わらず、 「これがチェリ仕込みのミュンヘン・フィルの音だ!」という音がサントリーホールに鳴り渡ったのには唖然)。そしてCDだが、こちらは完全初出! 1989年2月にウィーンのムジークフェラインでライヴ収録されていたが、そのままオクラ入りしていたもの。筆者の記憶違いでなければ、この時にも映像収 録があったとどこかで読んだ記憶がある(余談だが、録音嫌いなのに何故この録音は許可したのか? と問われ、「映像があるので許可した」と言っていたような)。こちらは未聴だが、まず彼らの音がかのムジークフェラインザールでどう鳴り響いたか、そして それがどう捉えられているか、が最大の聴き所となろう。当セットは完全限定盤、お早めに!