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Bill Evans『ライブ・アット・トップ・オブ・ザ・ゲイト』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/07/26   16:37
ソース
intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)
テキスト
text:常盤武彦

ニューヨーク、1968年10月23日。第3期エヴァンス・トリオ誕生の記録

ウェス・モンゴメリーの『Echoes of Indianna Avenue』や、スコット・ラファロの『Pieces of Jade』など、貴重な未発表音源のリリースで評価の高い米レゾナンス・レコードが、ビル・エヴァンスのエディ・ゴメス、マーティ・モレロとの、第3期トリオ誕生の瞬間をドキュメントしたライヴ・アルバムをリリースした。録音を手がけたのは、社長のジョージ・クラビン自身。クラビンは、当時コロンビア大の学生で、カレッジFM局のオンエア音源として収録した。楽器ごとにマイクをセッティングし、ミキシングを施して録音しており、テープの経年変化を恐れて10年ほど前にデジタルにトランスファーしたので、音質のクオリティも高い。グリニッチ・ヴィレッジを代表するジャズ・クラブのひとつで、1993年に惜しまれつつクローズしたヴィレッジ・ゲイトの1階レストラン&バー(メイン・ステージは地下)のトップ・オブ・ザ・ゲイトは、この録音の68年当時、毎月火曜から日曜まで2人のピアニストをフィーチャーしており、ビル・エヴァンスやセロニアス・モンクはレギュラーの出演者だった。観客の話し声や、グラスや食器のノイズも、当時のクラブの空気感を伝えてくれる。マーティ・モレロは、このギグ(10月23日)の一週間ほど前に初めて参加し、以来74年まで、歴代のエヴァンス・トリオのドラマーとしては最も長く共演し、エヴァンスの円熟期の多くの充実した作品を残している。生前のエヴァンスのライヴに触れた多くの人々は、クラシックの影響を受けた耽美派のピアニストというよりも、ジャズ・ピアニストのメイン・ストリームに連なるハード・スウィンガーだったことに驚いたという証言をしている。ニュー・フェイスの実力を試している本アルバムにも、耽美的なバラードのみならず、ハード・グルーヴを聴かせる瞬間が垣間見える。