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それは『殺しの番号』 から始まった! 

カテゴリ
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公開
2012/08/27   12:49
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
文/吉川明利(タワーレコード本社)

"My name is Bond, James Bond"

すべては、この瞬間に始まったのだった! 今では007ファンにはお馴染みの、我らがジェームズ・ボンドの登場場面でのセリフである。しかし、1962年に公開された第1作目の、カジノで煙草をくわえながらショーン・コネリーが言うこのセリフに、どれだけの当時の映画ファンがシビれたことか、若干遅れた世代には実感がなかった。むしろ最初の印象は「えっ、この人スパイでしょ、でも簡単に自己紹介しちゃうんだ、スゲェ」であった。

その記念すべき初公開から、今年は製作50周年にあたり『007製作50周年記念版ブルーレイBOX』が20世紀フォックス・ホームエンターテイメントより発売となる。初ブルーレイ化9作品を含む、全22作の豪華BOXだ。

さらに、歴代のボンドとボンドガール、そしてボンドカーの魅力に迫った、未公開映像を含む約122時間に及ぶ特典映像を収録。この50周年を機会に、美しいブルーレイでボンドを再チェックだ!

世界の映画史に名を残すシリーズ(日本人としては、その上には『男はつらいよ』があると言いたいが)の第1作目の公開タイトルは『007は殺しの番号』。この映画の成功なくしては続編もなかっただろうと言えるほど、第1作目の果した役割は大きかった。やがてリバイバル公開時に『ドクター・ノオ』(原題Dr. NO)となったこの映画の中には、その後に続くための〈スタイル〉が全て入っているのだ。当時の日本人の着る背広にはほとんどなかった、サイドベンツのスーツの着こなし、帽子の扱い、ドライ・マティーニへのこだわり、銃の好みなどである。もちろん、それらは原作者イアン・フレミングの文章にもあるが、それをどう映像として見せたら、もっとも印象的なジェームズ・ボンド像になるかを考えたのが、第2作目『007/危機一発』も監督したテレンス・ヤングだ。1作目と同じくリバイバル公開時に『ロシアより愛をこめて』と、原題直訳に変わったこの第2弾は、本格スパイ映画として、今でもシリーズ中1、2を争う人気であり、その質の高さが示せたからこそ、シリーズものとしてのステータスを確立できたのではなかろうか。そうした意味でテレンス・ヤングは映画史の中で、もっと評価されていい監督だと思っている。後年オードリー・ヘプバーン主演の「暗くなるまで待って」という秀作も発表して、単に007監督だけではない才能も見せているから、よけいにそう思うのである。

〈スタイル〉が出来たボンド像は、そのイメージがあれば、演じる俳優が変わっても問題なく製作されるようになった。ここが、そのシリーズの最も凄いところだろう。『ゴールドフィンガー』『サンダーボール作戦』『007は二度死ぬ』『ダイヤモンドは永遠に』は、ショーン・コネリーがボンドを演じたが『女王陛下の007』はジョージ・レーゼンビーだ。実は、コネリーのボンドにそれほど大きな思い入れを持たない、純粋な007映画のファンの間では『女王陛下~』の評価はすこぶる高い。3代目ボンドを演じたロジャー・ムーアは、最初からボンド役の候補に挙がっていたが、すでにTVの人気俳優だったため見送られた過去があり、1973年の『死ぬのは奴らだ』から満を持しての登場となった。彼はコネリー以上にユーモアのセンスもある、洗練されたイギリス紳士として『黄金銃を持つ男』『私を愛したスパイ』『ムーンレイカー』『ユア・アイズ・オンリー』『オクトパシー』『美しき獲物たち』の計7作品(シリーズ最多!)でボンド演じ、70年代から見始めたファンには、「やっぱりボンドと言えば、ロジャー・ムーアでしょ」と圧倒的な支持を集めるのであった。このように、どこからボンドに出会ったかで、映画そのものを見始めた時代が分かってしまうのが、このシリーズの特徴だ。80年代後半から見始めた世代は「ボンドと言えば、ピアース・ブロスナン!」だ。おっと失礼、その前にティモシー・ダルトンがいた。実は85年のロジャー最終作『美しき獲物たち』の時点で、彼はなんと58歳だった。そこで若返りとワイルドな風貌ということで、ダルトンが4代目ボンドに選ばれたが、絶賛とはいかず『リビング・デイライツ』『消されたライセンス』の2本で交代となった。5代目のピアースはロジャーが作った英国紳士路線を引き継ぎ『ゴールデンアイ』『 トゥモロー・ネバー・ダイ』『 ワールド・イズ・ノット・イナフ』『ダイ・アナザー・デイ』と魅力を発揮する。この頃からスパイ映画としてのサスペンスより、アクション重視の内容となり、現在のダニエル・クレイグに受け継がれているのである。

主演俳優以上に、忘れてならないのが作品に華を添えるボンドガールの面々だ。これぞシリーズもう一つのお楽しみだ。ファンそれぞれの好みがあるだろうが、勝手にBEST5を選んでしまうと①ダニエラ・ビアンキ、②ジェーン・シーモア、③キャロライン・マンロー、④モード・アダムス(この人だけ2回登場!)⑤ソフィー・マルソー、番外編としてシーナ・イーストン!

『殺しの番号』で50年前に登場して以来、『007』がその後の映画界に与えた影響は計り知れない。

ブルース・リーの代表作『燃えよドラゴン』は(悪役と設定が)『ドクター・ノオ』そのものと言ってもいい。コメディ映画のパロディとしても『オースティン・パワーズ』もそうだが、本格的にスパイ映画の部分までパロッたのが『ジョニー・イングリッシュ 気休め報酬』。そして、もっとも影響を受けている監督こそ、あのクリストファー・ノーランだ。『インセプション』の雪山での銃撃戦、『ダークナイト・ライジング』の冒頭の飛行機墜落場面など、彼ほど007的なアクションを理解している監督は他にいないであろう。

12月1日公開『スカイフォール』の次は、ぜひノーランに監督してもらいたい!

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