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リシャール・ガリアーノ

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公開
2012/08/28   12:16
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:佐藤由美

©Thomas Dorn

ピアソラ没後20年、真打ちによるオマージュがいよいよ開幕!

生涯を通し、既成の価値観と格闘し続けたアストル・ピアソラ(1921-1992)。異端と呼ばれてもなお音楽への熱情と執念をもって、タンゴに新たな地平を切り拓いていった巨星がこの世を去って、早20年。『ピアソラ・フォーエヴァー』は、パリで故人と親交を深めたリシャール・ガリアーノが、助言者にして恩師だったピアソラへ、万感の思いと最大級の敬意を込めて描く、極上のオマージュだ。

83年、両者はコメディ・フランセーズのとある仕事で相まみえる。ピアソラ、63歳。初来日公演の翌年、至高のキンテート(五重奏)で円熟期を迎えていた頃だ。32歳のガリアーノはすでにクラシック界で名声を轟かせ、バルバラ、アズナヴール、グレコら錚々たる大物の伴奏を務め、ジャズ領域へと邁進していた。

ともにイタリア系ルーツをもつ、蛇腹楽器プレイヤー同士。世代こそ違え、この出会いにきっと何か運命的なものを感じていたのだろう。ピアソラはガリアーノへ、「革新への挑戦」という命題を投げかけた。母国の古風な伝統音楽に斬新な息吹をもたらすよう促したのだった。奇しくもその言葉は、33歳のピアソラがパリ留学中、ナディア・ブーランジェ師より託されたメッセージに似ている。

かくしてガリアーノ代表作のひとつ、91年作『ニュー・ミュゼット』が完成。日本でも驚くほど広くその存在が注目されることとなった。強靭なテクニック、哀愁の旋律の背後に暗躍する異能のエネルギー、溢れ出すアイディア。以後、彼は繰り返し、ピアソラ作品とオリジナルの現代タンゴ(いかにもピアソラ流派の楽曲!)を世界中で演奏、録音していく。今回ワールドツアーで披露されるレパートリーと七重奏団の編成は、2003年発表の傑出したアルバムが基調にある。

命がけの偉業にもかかわらず、ピアソラ音楽は長らく難解とみなされ、生前に真の商業的成功をつかめなかったとは、なんと悲しむべきことか。そんな当人の無念をよく知るガリアーノにとって、没後20年に捧げるオマージュには格別の思いがあるはずだ。愛すべき巨匠のあらぶる魂が、舞い降りてくるに違いない。

LIVE INFORMATION
『リシャール・ガリアーノ七重奏団  "ピアソラ・フォーエヴァー"』 

9/16(日)鎌倉芸術館大ホール

(予定曲目)ピアソラ:リベルタンゴ、オブリヴィオン、エスクアロ(鮫)、ミケランジェロ70、ブエノスアイレスの四季、天使のミロンガ、スール・甦る愛、百年の孤独、バチンの少年、ガリアーノ:ニューヨーク・タンゴ、クロードのためのタンゴ、ロドリゲス:ラ・クンパルシータ、バッハ:管弦楽組曲第2番BWV1067より

http://www.kamakura-arts.jp/

特設ページ(演奏動画、インタビュー、推薦コメント等)
http://www.kamakura-arts.jp/blog/cat4/post-114.html

9/17(月・祝)北國新聞赤羽ホール(金沢ジャズストリート2012への出演)

http://kanazawa-jazzstreet.jp/

9/20(木)〜22(土)ブルーノート東京(スペシャルゲスト:寺井尚子)

http://www.bluenote.co.jp/


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