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菊地成孔

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公開
2012/08/31   19:47
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:intoxicate編集部

©Shiro Miyake

ダブ・セプテット、ペペ・トルメント・アスカラール、DCPRG──3つのアンサンブルのライヴを開催!

菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールの響きが、ルパン三世40周年を記念したスピンオフ版である『Lupin the third ~ 峰不二子という女』(日テレ全13話)のオープニングを飾り、いままさにデビューに向けたリハーサルが繰り返されているという噂の、Dub Septetを伺わせる3管のジャズコンボの響きが、この劇中に盛り込まれ、国民的アニメのひとつであるこの作品は、実は、菊地がパラレルに動かしているプロジェクトを覗き見ることのできる窓のようなものだったと、思う。この『Lupin~』の放送終了直後に、行われたグローブ座のペペ・トルメント・アスカラールの公演は早々、売り切れ、ルパンのオープニング曲である《新・嵐が丘》の元になった《嵐が丘》などを中心にした曲で構成された公演に、会場は大いに盛り上がったという。

常に同時に複数のプロジェクト/闘争が並走してしまうまるでアニメ『GANTZ』のような菊地の小宇宙の中で、ファンはいつもなにがしかの決断と選択を迫られる。すべてを選択し受け入れるという強者ももちろん、いるのだろうが。あるいはDCPRGを聴いている、あるいは楽しむ聴衆は、菊地がDCPRGをコンダクトする同じ方法で、バンドネオン、ハープ、弦楽四重奏といった楽器が並ぶアンサンブルを指揮していることなど、関知しないのかもしれない。同様にペペ・トルメント・アスカラールの世界を堪能する人には、DCPRGのエレクトリックな喧噪は必要のない世界なのかもしれない。

この秋、9月から10月にかけて、東京では菊地成孔の“音楽”を構成する三つのアンサンブルの公演が開催される。9月13日は、「年間契約」なるものを約束したというブルーノート東京での新生ダブ・セプテットの初公演である。フロントにトランペット、トロンボーン、サックス、そしてピアノトリオとライブダブエンジニアで編成され、メンバーはあらたにリクルートされたトロンボーン以外は、ダブ・セプテットのメンバーである。おそらく音楽は、爆笑問題『ニッポンの教養』のオープニング、あの感じ、のようだ。2012年生誕100年を迎えたギル・エヴァンス・イヤーにふさわしいジャズバンドの誕生となること期待したい。

同じく生誕100年を迎えるジョン・ケージ・マナー(チャンスオペレーション/サイレンス!)をアンサンブルに踏襲した(?)2つのラージアンサンブル、ぺぺ・トルメント・アスカラールとDCPRGが、9月29日(土)すみだトリフォニーホール、10月8日(月祝)日比谷野外音楽堂に登場する。DCPRGは今年4月に新木場で、新譜『SECOND REPORT FROM IRON MOUNTAIN』のリリースパーティを兼ね、ライヴを行っている。ゲストにアルバムでコラボしたSIMILAB、大谷能生が参加した。今回の野音のステージは、ゲストにSIMILABが登場し、フロントアクトにもうひとバンド、予定しているようだが、アナウンスはこれからのようだ。ライヴ毎、更新される《CIRCLE/LINE》や、《CATCH 22》の演奏を、2010年、伝説となった豪雨のステージから二年ぶりとなる野音で確認したい。

ここ数年、アルバム『NEW YORK HELL SONIC』からのレパートリーを中心に活動を組み立てているペペ・トルメント・アスカラールだが、このアルバムに収録された二つのアリアを独唱する林正子は、クラシックに馴染みのないファンを、公演の度ごと、クラブ、ジャズクラブ場所を超えて、圧倒してきた。今回は林にとっても親近感のあるホール公演であり、ペペ・トルメント・アスカラールにさらにオーセンティックなオルケスタの魅力を余すところなく伝えてくれそうだ。オープンエアーでエレクトリック・ファンクのヴァイブにまみれ、コンサートホールではフォーマルな雰囲気の中、菊地率いるオルケスタの響きに浸る。

菊地成孔は、この交わることのない3つ音楽を併存させ、それぞれ固有のエンタテインメントを発生させてきた。しかしこの3つには意外にも同じ発生原理が働いている。それは、ポリリズムだったりポリBPMだったりするようだが。同じ原理に基づき発生したそれぞれの音のフィギュアに、様々な衣装を準備し、それぞれの活動領域をアサインする。3つの菊地の音楽は、三つの異なる現実のヴァリエーションであり、三つの果たせないそれぞれの夢を発生しつづける、その全体が菊地の音楽を持続させるひとつの原理のようだ。今年の秋は、ようやく三つのバンドにふさわしいそれぞれの場所がそろった、不可視の夢の領域を来年駆動する、準備がととのったようだ。

LIVE INFORMATION

『菊地成孔ダブ・セプテット』

9/13(木)
[1st] 17:30開場/21:00開演
[2nd]22:45開場/21:30開演
出演: 菊地成孔(sax)類家心平(tp)坪口昌恭(P、kaoss pad)鈴木正人(b)本田珠也(ds)パードン木村(real time dub effects) 他メンバー近日発表!
会場:ブルーノート東京

『具象の時代 菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール』

9/29(土)17:00開場/18:00開演
出演:菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール
ゲスト:林正子(S)
会場:すみだトリフォニーホール

Ron Zacapa presents『DCPRG YAON 2012』

10/8(月・祝)15:30開場/16:30開演
出演:菊地成孔DCPRG
ゲスト:SIMI LAB, toe  (順不同)
会場:日比谷野外大音楽堂

http://www.kikuchinaruyoshi.net