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Manuel Valera 『New Cuban Express』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/09/07   22:26
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:常盤武彦

躍進する新世代のキューバ系ジャズマンたち

1990年代初めゴンサロ・ルバルカバ(P)が登場した頃までは、キューバ出身のアーティストがアメリカで演奏活動を展開するのには、かなりの困難が伴ったが、ここ10数年、大きく状況は変わり、多くの才能がキューバからアメリカに進出している。ヨスヴァニー・テリー(ts,perc)、ダフニス・プリエト(ds)、フランシスコ・メラ(ds) 、そして本作の主人公マニュエル・ヴァレラ(P,key) らがニューヨークを拠点に活躍する面々だ。彼らに共通するのは、マッコイ・タイナー(P)、ジョー・ロヴァーノ(ts)やスティーヴ・コールマン(as)ら、ジャズ・ミュージシャンからも高く評価されて起用されているところだ。先日のレニー・ホワイト(ds) によるマイルス・デイヴィス・トリビュート・ギグでもヴァレラは、ハンコック・ライクなプレイでホワイトをサポートしていた。彼らは、自らのリーダー・グループでは、ダウン・タウンのジャズ・ギャラリーや、ジンク・バーなどを拠点に活動している。

1980年生まれのヴァレラは、本作がリーダー6作目で、前5作はピアノ・トリオを中心としたコンテンポラリー・ジャズを追求したが、今作では同郷の先輩のヨスヴァニー・テリーを迎えて、初めてキューバン色も大きくフィーチャーした。2012年の1月に17年ぶりに故郷を訪れ、自らのルーツを改めて認識したことが色濃く反映された作品となっている。ピアノ、パーカッション・ソロのドラマティックな導入部をもつM3やM9に、今作への強い意気込みが感じられる。チック・コリアやハンコックが70年代に押し進めたジャズ・ロックを、この超絶技巧リズム・セクションでブラッシュ・アップしたM4、M13は、コントラストを描き、ヴァレラの多彩な才能を顕示する。彼ら才能豊かなキューバン新世代は、現代ニューヨーク・ミュージック・シーンの重要なピースである。