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ペンギン・カフェ『ア・マター・オブ・ライフ 』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/09/11   12:36
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:小沼純一

息子アーサーが再始動! ペンギン・カフェ・オーケストラからペンギン・カフェへ

ペンギン・カフェ・オーケストラの名を目にしたのは1970年代の後半。ブライアン・イーノのオブスキュア・レーベルの1枚に『Music from the Penguin Cafe』という奇妙なタイトルのアルバムを発見したときだった。このシリーズのおかげで、ナイマンやブライヤーズ、ホッブズの名を知ったのだが、ペンギン・カフェは他のものよりずっとポップで、馴染みやすかった。

中心にいたサイモン・ジェフスが97年に急逝、その10年後、息子のアーサーが父のやっていた音楽を再始動させる。今度は「オーケストラ」をとって「ペンギン・カフェ」だ。

どうして「ペンギン」なのか、アーサーは語ってくれる。

「1972年、南仏で、父は貝で食中毒をおこして寝込んでいた。そのときに夢をみた、というんだ。近未来なんだろうか、生命感のない、とても味気ないコンクリートだらけの場所に父はいた。ミュージシャンは何人もそこにいるのに、みんなヘッドフォンをかぶっているばかりで、音は外にひびいてこない。監視カメラさえある。あぁ、こんな暮らしはしたくない、と父はそこからはなれ、別のところへ行くと、なんとそこには笑い声があふれ、音楽があふれ、みんなが歓迎してくれるではないか! そこがペンギン・カフェ、大きなペンギンが主人だったんだよ。ながれている音楽はどこかで耳にしたことがあるけれど、特定できない、わからないもの。こういうのがペンギン・カフェのもとになっているんだ」

おそらく誰でもがこの音楽にふれると心身にぱっと微笑みが生まれるだろう。その源泉がこのエピソードにはある。いろいろな音楽がちょっとずつ混じりつつ、でも、ひとつの方向に突っ走らないようにする。特定のスタイルにしないことがサイモンの美学だったとアーサーは語る。おなじように、アヴァンギャルドとポップをも共存させようとすること。そして、そのときどきに流行っていたり、メインストリームになっている音楽とは距離をとること。そんなところが、ペンギン・カフェを現在も古い/新しいという基準では測れないものにしているにちがいない。

秋の来日公演のみならず、来年には新国立劇場でのバレエも予定されている。しばらくこの音楽にふれてみるのは如何か。

LIVE INFORMATION
『ペンギン・カフェ来日公演2012』

10/7(日)六本木ヒルズアリーナ
ゲスト:ゴンチチ、伊藤ゴロー
10/10(水)梅田クラブクアトロ
(10/6、10/8は完売)
http://plankton.co.jp/

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