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Christian Scott 『クリスチャン・アトゥンデ・アジュアー』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/09/23   20:54
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:佐藤英輔

有言実行の男、クリスチャン・スコット。予告通りの充実大作!

今まで会ったジャズ・マンのなかでもっともビッグ・マウスな男は?

もしそんな問いをされたら、ぼくは間違いなくクリスチャン・スコット(1983年ニューオーリンズ生まれ。NY在住)の名を挙げるだろう。もう、デカいこと、強気なことを言いまくり。だが、彼は有言実行の男。自らもきっちり律し、ジャズという20世紀最良の米国アート・フォームに体当たりし、ミレニアム世代の胸を張ったトランペット吹きとして枠を広げんとしてきた。コンコードと契約しての彼の諸作はそうしたストラグルの経過であり、彼は自らのジャズを「ストレッチ(stretch)・ミュージック」と呼んでいる。

そんな彼の5作目『クリスチャンン・アトゥンデ・アジュアー』はなんと2枚組の大作である。そのアルバム表題は、自ら称するアフリカン・ネームであるとか。また、カヴァー写真において、彼は家系のマルディグラ・インディアンの衣装を身にまとっている。と、書くと、しっかり原点回帰的表現に向かっているようだが、全然そんなことはない。彼が臨んでいるのは、強固な相互関係を持つバンドによる、いろんな奥行きや伸びしろを求めた現代ジャズ表現。彼はその指針を100%掌握し、その上で雄弁で多彩なトランペット音を鳴らしきる! なお、楽曲はすべて、もちろんクリスチャンかバンド・メンバーのオリジナルだ。

ファンならご存知だろうが、クリスチャンはレディオヘッドの大ファンで、常々「レディオヘッドがロックの分野でしていることを、俺はジャズで求めたい」と明言している。そして、そういう思いはここにも横溢する。

しっかりとルーツや立脚点を持つからこそ、心置きなく飛躍し、一筋縄ではいかない凸凹を求めなくてはいけない。それこそは、今に生きる表現者に必要とされることであり、それは最大の自由や創造性の行使に結びつく。

そう、彼は新作できっぱり宣言している。クリスチャン・スコットはもっともっと、ビッグ・マウスになっていい。

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