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David Byrne&St. Vincent『ラヴ・ディス・ジャイアント』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/10/09   17:44
ソース
intoxicate vol.99(2012年8月20日発行号)
テキスト
text:村尾泰郎

バーンの青春を取り戻した女傑、アニー・クラークの才能に感服!

今年春にはカエターノ・ヴェローゾとの共演ライヴ・アルバムをリリースしたばかりのデヴィッド・バーン。今度はうら若きクール・ビューティー、セイント・ヴィンセントことアニー・クラークとのコラボレート・アルバムを完成させた。アニーはポリフォニック・スプリーやスフィアン・スティーヴンスのバンド・メンバーとして活動しながら06年にソロ・デビュー。これまでに3枚のアルバムを発表しているが、オルタナティヴなポップ・センスと表情豊かなヴォーカルで高い評価を得てきた。そんなアニーとバーンが初めて会ったのは、09年に行われたチャリティ・イヴェント『ダーク・ワズ・ザ・ナイト』でのこと。そこで意気投合した2人は、音源をデータでやりとりしながら2年以上に渡って共同作業を重ねてきた。

2人ともサウンド・プロダクションにこだわるタイプだけに、複雑に入り込みながらもポップなアレンジはさすが。なかでもアクセントになっているのがブラスで、骨太な躍動感とともにどこかユーモラスな味わいも与えている。アフリカ音楽〜ファンク・ミュージックを化学変化させたような奇妙なグルーヴはデヴィッド・バーン色を感じさせるが、一曲でフェラ・クティ直系のアフロ・ファンクを聴かせるアンティバラスやソウルフルなファンク・バンド、ダップキングスが参加。リズム・セクションをしっかりと際立たせながらも、エレクトリックなサウンドと生楽器をブレンドさせたオーケストラルなアレンジにはアニーのセンスも光っている。そして、ヴォーカリストとしても強いキャラを持つ二人のデュエットも聴きどころ。どこかミュージカルみたいなシアトリカルな雰囲気も感じさせるアルバムだが、ずっとバーンに憧れてきたというアニーだけに2人の息はぴったりあっている。これまで意外と女性アーティストとのコラボレーションがなかったバーンだが、アニーという新たな才能から刺激されることが多かったことが伝わってくる回春効果の高い充実作。

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