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コロムビア和ジャズ・リイシュー・シリーズ

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2012/10/23   13:37
ソース
intoxicate vol.100(2012年10月10日発行号)
テキスト
text:上村敏晃

和ジャズ──クロスオーバーの歴史

昭和時代に録音された日本のジャズの音源が「和ジャズ」というネーミングで発掘・CD化が進められていて、一つの社会現象になっている。日本コロムビアにはこの「和ジャズ」にふさわしい音源が数多く残されていて、それらは順次CD化されていくが、今回リリースされたのは、「和ジャズ・リイシュー」が10作。これはどれも初CD化で、60年代後半~70年代に発表された作品だ。そして、「和ジャズPLAYS…」が4作。こちらは同社の音源から日本のジャズ・ミュージシャンがビートルズやボサノヴァなどの名曲をカヴァーしているトラックを選りすぐったコンピ盤だ。

上述の「和ジャズ・リイシュー」アルバムが発表されたのは、ロックやファンクが隆盛だった時代だ。当時はそれらの要素を取り入れたジャズ・ファンクやジャズ・ロックも人気を博していたが、今回リリースされた作品の中には、そこで聴ける音楽が、あの時代の大きなうねりの下で生まれたことを証明する、独特の熱気をはらんだ、弾けるようなヒップな感覚の表現を体感できる作品も含まれている。たとえば、『アワー・タイム』『ハイ・フライング』『バイ・ザ・レッド・ストリーム』などはその好例だろう。また、『アワー・タイム』『ハイ・フライング』では、現在も名手として活躍するベースの岡沢章、ドラムの村上秀一が起用されていて、二人の若かりし頃のみずみずしいリズム表現が印象的だ。

名手といえば、当時、引く手あまたのトロンボーンの名手だった鈴木弘の『ビートでジャンプ』は、ポップス、ロックのヒット曲カバー集だ。日本の名門ビッグ・バンドで活躍し、その後、バディ・リッチ楽団にも入団した鈴木のトロンボーン・ソロが見事だ。『エレクトロニクス』は原信夫とシャープス&フラッツ+1の名義になっているが、この1とは、ピアニスト本田竹曠である。当時、本田は22歳。本作ではエレピとオルガンを弾いていて、彼のソウルフルなフィーリング溢れるプレイが、シャープス&フラッツのグルーヴィで切れのいいビッグ・バンド・サウンドに熱く映える。そして、その音楽性豊かなサウンドのアレンジは佐藤允彦だ。『これぞモダン尺八第2集』は、洒脱なアレンジのサウンドをバックに、スタンダードの名曲を村岡が尺八で演奏する内容。表題にもあるように、この尺八のモダンな響きは、ちょっと、嬉しい、意外な驚きだ。